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司法書士 樋口 正洋さん(太田市浜町)

【略歴】明治大卒。司法書士。群馬司法書士会理事。東上州33観音霊場会会長。太田中央ライオンズクラブ前幹事。群馬法律学校元講師。東京地方検察庁元事務官。

登記識別情報の登場


◎目隠しシールが重要に

 十年ほど前、郵便番号が五けたから七けたになったとき、相手方の住所の郵便番号がなかなか覚えられなくて、苦労した経験がある。現在では、携帯電話の十一けたの番号が今でも覚えられない。途中までは覚えているが、最後の方になるとあやふやである。

 また、住基ネットシステムの開始により、住民票に十一けたのコード番号が付されている。これなどは、どのような番号だったのか、まったく記憶にない。

 考えてみれば、わたしたちの社会は番号があふれている。どのようなものでも数字で処理をしようとする傾向にある。

 この傾向は、土地、建物などの不動産取引社会にも広がった。昨年三月の不動産登記法の改正により、権利証が英数字になった。

 権利証というのは、土地や建物を購入や相続によって取得したとき、その所有者であることを証明する重要な書面である。

 その書面が法改正によってなくなり、新しく登記識別情報と呼ばれるものになったのである。

 登記識別情報というのは、従来の権利証の内容を十二けたの英数字で表すものである。例えば、17k8f460w9h3という記号が、今までの権利証に代わるものになった。

 これまでは、権利証はそれを保管しておけば、不動産を所持しているという意識が強かったが、これからの登記識別情報は英数字なので、それを保管しておくということが非常に困難になる。

 法務局からは、十二けたの英数字を印刷した書面という形で発行される。もちろん、英数字の上には目隠しシールが張られ、他人が勝手に見ることができないようになっている。

 この目隠しシールをはがしてしまったら、非常に危険な状態に登記識別情報を置くことになる。その英数字を他人に見られたりしたら、権利証を盗まれたと同じ結果になるからである。誰も銀行のキャッシュカードの番号を他人に見せたりはしないだろう。

 それでは、その英数字を暗記してしまうことも考えられる。しかし、ランダムに書かれた十二けたの英数字を永久に記憶しておくことは不可能に近い。

 登記識別情報がこのような面倒なものならば、いっそうのこと、それはいらないという人もいるだろう。

 改正法は、登記識別情報の不発行制度、あるいは一度発行してもその効力を失わせる失効制度も認めている。この方法は以後、英数字が見られたり、知られたりする危険性はなくなるが、権利証を所持していないと同じ結果になり、将来の登記手続きが面倒になる。

 登記識別情報を所持しながら、その危険性を未然に防ぐためには、目隠しシールは必要なとき以外ははがさないこと。仮にはがしたとしても、それを他人に見せない、教えない、渡さないことが絶対的な必要条件となってくる。

(上毛新聞 2006年1月9日掲載)