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日本画家 上野 瑞香さん(富岡市七日市)

【略歴】東京芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻日本画第三研究室修了。05年3月より富岡市内にアトリエを持ち、現在は個展、グループ展を中心に活動。

色で遊ぶ


◎感覚で自由に作れる

 新年あけましておめでとうございます。寒い日が続いておりますが、皆さんはこのお正月休みをいかがお過ごしでしょうか。この機会に家族で、友人で、色で遊んでみるというのはいかがでしょうか。

 必要なのは白い紙(ノートでもコピー用紙でも可)と、水彩絵の具の赤青黄の三色(透明でも不透明でも可。学生時代に使い、すでに固まってしまっている物でも崩して水と混ぜれば可)、筆(細、太、線描き用等どれでも可)、パレット(なければビニール袋でも絵の具が混ぜられれば可)と、水です。

 ちょっとしたゲーム感覚で、その三色を使って、各自がいくつ色を作り出すことができるかを競い合います。色は紙に丸や星や線で表し、ほかの色と比べられるように並べて描いてゆきます。

 これは以前していた、カルチャースクールの小学生教室で、チューブから出したままの色でしか絵を描けない子供たちに、見て感じて自分の色彩で描くということを伝えるのに、非常に有効なゲームでした。

 まず、赤、青、黄の三色を塗り終えた多くの子供たちが次にするのは、自分の知っている名前の色を作るということ。つまり、ほぼ同量の二色、赤と青を混ぜて紫、赤と黄を混ぜて橙(だいだい)(オレンジ)、青と黄を混ぜて緑を作るということです。そして、少したってから、その間の色つまり、二色のうちのどちらかの割合を多くした黄緑、青緑、赤紫、青紫に気付きます。しかし、ここで自分の知っている名前の色が尽きてしまうと、ようやく色について、名前からイメージするのではなく、感覚から自由に作れることに気付くのです。

 専門家ならばここで、珊さん瑚ご色(明るい赤)、臙脂(えんじ)(強い赤)、蘇芳(すおう)(くすんだ赤)などの名前が浮かぶのかもしれません。また、さらにそこへ「赤み」「黄み」などの言葉をプラスして(例えば、ごく薄い紫みの赤=桜色)色数を増やしてゆくのでしょうが、「色は頭で作るより、体で作れ」です。

 そして、実はここからが、ゲーム本来の始まりであり、色の作り方を選ぶ(見つける)手段・方法によって、子供たち一人一人の性格の違いが如実に表れてくるのです。

 今まで作った色を、どんどん混ぜ合わせることで、たくさんの色を作ろうとする子供。まず元の三色のうちの二色ずつにもう一度戻って、例えば赤に少しずつ黄を足してゆくというように、微妙な違いの色をある意味、機械的に作ってゆく子供。水を加えると色が薄くなることを、筆を洗う時に発見して、今までに作った色すべてに、水を少しずつ加えてグラデーションにしてゆく子供…。

 ちなみに教室の小学生は百二十色くらいで競っておりました。むろん、その数は自己申告制なのですが。まだまだ名前のない色はたくさんあるはずです。なにしろ色は、自分自身が表現するものなのですから。

 さて、あなたはいくつの色ができたでしょうか?

(上毛新聞 2006年1月7日掲載)