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富岡総合病院長 柴山 勝太郎さん(高崎市竜見町)

【略歴】群馬大医学部卒。同学部附属病院助手(泌尿器科)、富岡厚生病院医長、同学部助教授を経て91年から富岡総合病院長、02年から県病院協会長。

自治体病院


◎法人化を検討する時期

 江戸時代に始まるわが国の医療は、明治に入っても引き続き漢方医が継ぐことになった。一方、新たに導入された西洋医学は新しい医学体系として病院を必要としたが、わが国には欧米のように病院の核となる公的あるいは宗教団体による患者の収容施設がなかったので、病院の多くが開業医の診療所から出発した。そのため、病院と診療所の機能分化が不十分であった。

 戦後、昭和三十五年に国民皆保険制度が実現して国民は誰でも自由に病院が利用できるようになった。高度経済成長の時代と重なり、私的病院は医療金融公庫から低利の資金を調達して病床を増やし、公的病院も自治体から補助金を受けて設備投資を拡大した。

 自治体にとっても、公的病院に投資することは住民から強い支持を期待できた。そこで公私間の利害が競合し、各地で地元医師会と自治体の間で病院の増床をめぐって紛争が発生した。その結果、わが国の病床数は先進国の中で最も多くなり、将来に問題を残すことになった。

 医療制度の本格的な見直しが始まったのは、第二次医療法改正(平成四年)以降であり、バブルの崩壊による経済の低迷と医療費抑制により、医療をとりまく環境は一気に厳しさを増した。私的病院は得意な分野に人材を集めて専門病院化し、または病院をグループ化して経営の合理化を図った。一方、自治体病院の反応は鈍く、状況が悪化しているにもかかわらず危機意識が薄かった。

 厚生労働省の調べでは平成十五年度、自治体一般病院(八百六十二病院)のうち88・3%が赤字であった。その他公的病院(日赤、済生会など二百七十病院)の44・2%に対し自治体病院の悪さが目立つ。病院の経営が健全であれば、自治体は病院の本業に税金を投入する必要はないが、赤字が出れば住民の税金で補てんしなければならない。地域医療は自治体にとって行政の目玉なので、少々の赤字は黙認されてきた。

 平成十六年の調べでは、全国自治体病院の一割に近い七十七病院で再編計画が進められている。筆者は、国や自治体が病院を経営することに限界を感じている。自治体病院は公営企業として経営されている。病院事業を企業として経営するには、医療サービスの原資であるマンパワーを豊富に確保することが必要であるが、これは公務員の人事制度とは相いれない。また、企業の経営責任についても制度上、明確でない。

 現在、医療法人制度の見直しが検討されているが、先ごろまとまった医療法人制度改革(案)では、自治体病院の受け皿として公益性の高い医療法人の創設が提言されている。既に、国立大学や国立病院の法人化が先行している。自治体病院も法人化を真剣に検討すべき時期と思われる。

(上毛新聞 2005年12月24日掲載)