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◎背景にさまざまな要因 私は「臨床心理士」として心の問題に取り組む仕事に携わっております。臨床心理士とは「日本臨床心理士資格認定協会」によって認定されている資格です。この協会は、心の問題に取り組む専門家の資格認定を行うため、心理臨床に関連のある十六の学会の総意に基づいて一九八八年に設立された協会で、九〇年には文部科学省から公益法人格をもつ財団法人として認められ、現在、一万三千二百三十五人(医師四百一人を含む)の資格認定を行っております。 臨床心理士は、心の専門家として、文部科学省の実施するスクールカウンセラー事業の任用をはじめ、医療・保健、福祉、司法・矯正、労働・産業などさまざまな領域で心の問題に取り組んでおります。 私自身は主に小中高、大学といった教育機関においてカウンセリングやコンサルテーションの業務を行っているのですが、今日の教育現場においてさまざまな子供の心の問題が生じています。 文部科学省の二〇〇一年度における国公私立小中学校の児童生徒の諸問題の現状によると、不登校児童生徒数は十三万八千人を超え、調査開始以降最多となりました。それ以降は減少傾向を見せるものの、本年度学校基本調査速報によると、〇四年度の「不登校」を理由とする児童生徒数はおよそ十二万三千人で、依然として学校教育における重要な課題の一つであります。 統計上の課題認識もさることながら、不登校の問題というのは学校に行った行かないといった単純な問題ではなく、実際に個別ケースにかかわってみると、「不登校」と呼ばれる子供やその保護者(家族)の苦悩や焦燥、そして教員の困惑など、不登校という問題にかかわるさまざまな方々の気持ちが見えてきます。 同じ「不登校」でも、そこに付加される意味合いはケースによって変わってきます。多くのケースにかかわり、話を聴いていると、学校に行かないとはどういうことか、学校へ行く意味とはどういうことか、不登校となった子供の将来はどうなるのか、子供の成長・自立とは何か、子供の成長を支援する子育てや教育とは何かなど、さまざまなことを考えさせられ、難しいのですが大事な問題であると思っています。 もちろん、子供の心の問題は不登校の問題だけではなく、いじめ、自殺(企図)、場面緘黙(かんもく)、発達障害、学級集団不適応、非行問題行動、家庭・学校内暴力、薬物依存、摂食障害、中退など、どれも一朝一夕には解決が難しい問題があり、社会現象ともなっております。 子供の心の問題が生じる背景にはさまざまな要因があるといわれていますが、私が心理臨床(カウンセリング)業務に携わっていて強く感じている「心の問題」に関する私見を、今後この紙面を借りて書いていきたいと思っております。また、そういった心の問題の解決を支援するカウンセリングがどのようなものであるかについて、お話したいと思います。 (上毛新聞 2005年12月11日掲載) |