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◎「新隣組」醸成の一助に 桐生市本町二丁目に、江戸時代からの商家「矢野園」の蔵群を使ったイベントスペース、有鄰館がある。この場所で十月二十八日から十一月六日までの十日間にわたり、今年で十回目を迎えた「桐生ファッションウィーク」が開催された。今回は五十二の団体が参加し、各団体のイベントが同市全域で同時多発的に行われた。 ファッションタウン桐生推進協議会の支援を得て、桐生青年会議所が事務局を担当した。五十二のイベントをのぞくと、メーン会場となる有鄰館ではハンドクラフト作家が集まる「一店一作家特別展覧市」、桐生倶楽部では「東海道五十三次の今昔展」(大川美術館)、市民文化会館では着物で参加する「ワインパーティー」、本町四丁目駐車場では「Myスタイルコンテスト」、本町二丁目では「桐生沙さ綾や市」、さらに群大工学部の「群桐祭」などが開催された。 回を重ねるごとに開催範囲は広がり、あふれるほどのイベント情報が停滞し、参加者にも出展者にも悩みの種だった。まして参加団体の多くはボランティアで、日々、その準備を行うわけではない。独立独歩の気風も相まって、連携・協調はおのずと後回し、この混乱ぶりはいたしかたない。だが、パンフレット作成やイベントの案内のためにも、その調整は必須であり、担当する実行委員会の苦労も並大抵ではなかった。 そこに目をつけたのが、総務省関東総合通信局だ。IC(集積回路)タグとインターネットを使った口コミ回覧板やポスター型のICタグ読み取り装置を連動させた「タウン情報ネット」を提供して、桐生ファッションウィークを楽しんでもらおうと準備をしてきた。その構成組織には電子情報通信学会と、群馬大学、慶應義塾大学、早稲田大学、東京農工大学の四大学、企業からは大日本印刷、富士通、日立製作所、NTT、行政からは県と桐生市が参加した。 そして、桐生市のIT(情報技術)系ベンチャーのブレス社がタウン情報ネットのシステムを提供した。地方の実証実験にこれだけの構成員が集まることはまれで、それだけでも実験への興味と期待の大きさがうかがえた。地域の団体や行政への連絡、そして実験会場の設営と人集めはNPO法人桐生地域情報ネットワークがあたり、実行委員会や参加団体との連絡役を受け持った。 実験は先月五、六日に実施した。情報提供システムの目玉は、参加者からの口コミ情報。イベントの感想を携帯から写真を添付してメールし、それを口コミ情報としてインターネット経由で提供した。 また、参加者も好みの情報を登録したICタグをかざすだけで、現在開催中のイベントと自分好みの口コミ情報を、端末PCや携帯で閲覧できるのだ。少子高齢化と過疎化の先進地であるわが町桐生に、ITがどんな役割を担えるのか。われわれNPOはこの実験が「新しい隣組」を醸成する一助となることに期待している。 (上毛新聞 2005年12月5日掲載) |