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◎力いっぱい抱きしめて 子育てとは、言葉では簡単に言い表せるが、実は大変なことである。親子の関係であればこそ、子供を一人の人間に育て、立派に独立させてやるべく、義務を与えられている。結婚して、子供が生まれれば、おおかたの人は、避けて通れない道である。 景気の低迷もさることながら、子育てに携わる家庭の主婦までも、パートとして働かざるを得ないのが実情のようだ。 薄暮迫るころ、ランドセルを背にとぼとぼと帰る学童の姿を見かけることがある。 家に帰っても誰もいないから、学校で遊んでいる子もいるようだ。 だから、明和町役場から、「五時になりました。青少年のみなさん早く、おうちへ帰り、みんなと食事をともにしましょう」と、毎日全町に放送されるのである。 母親は、夕食の支度が待っている。疲れているからとは言えない。遊び疲れた子供は、おなかを空かして機嫌が悪い。お互いにストレスもたまり、ぎくしゃくしている。 ある時、デパートの玩具売り場で、小さい子供が、何かを母親におねだりしていた。 「だめ!」 「ほしいよう!」 子供は再度、親にねだっていたが、駄目なものは駄目と言いながら、二回ほど、頭をたたくのを目のあたりにした。 人間にとって、頭は最も大切なところである。万一、間違いでも起きたらどうなるか、考える余裕など持ち合わせてないのであろう。 この子が大きくなったら、「どんな、人間になるのだろうか?」と、考えると、人ごとではなかった。 どうして頭をたたくのだろう。もっと、優しくいたわってやれないものだろうか。 いつもたたかれていると、「自分は駄目な子なのだろうか? それとも、親は自分を嫌いなのだろうか?」と、思うようになる。 やがて学校などで、自分が母から受けた仕打ちを、弱い子どもに試してみる。成功すると、いじめることに快感を覚え、悪の道へと、落ちていくような気がする。 昨今の犯罪の傾向は、小学校の低学年に及んでいる。由々しき問題である。 家庭にも責任があることは、否めない。「子供は、親の背中を見て育つ」と言う。 親も襟を正して、子供の手本になるように心掛けるべきである。 子供の良いところを見つけて褒めてやれば、子供は良い子になろうと努力するだろう。 私は、時々思う。いまの子供たちは愛情に飢えている。時には、母の懐に力いっぱい抱きしめてやってほしい。 (上毛新聞 2005年11月28日掲載) |