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元群馬町教育長 山本 幸雄さん(群馬町金古)

【略歴】信州大卒。60年、群馬に移り旧小串中(嬬恋)の教諭生活をスタート、堤ケ岡小などで教頭に。群馬中央中の校長を退職後、群馬町教育長を2期務めた。

子供の力伸ばす教師


◎進取な姿勢が信頼得る

 急激な国際化、情報化、少子高齢化の進展や経済の不透明感もあって、教育環境にもさまざまな影響と変化をもたらしている。不登校者の増加、少年非行の凶悪化、治安の悪化、学校の統合や廃校などは顕著な例である。

 平成十四年度から学校五日制での教育課程が実施され、各小・中学校では創意工夫しながら基礎・基本内容の確実な定着を図り、児童・生徒に「生きる力」の育成を目指した教育活動が推進されている。これに対して、県教育委員会や市町村も手厚い支援策を講じている。

 体験的な学習や情報教育、国際理解教育の一環として英語の授業も各地の小学校で実施されている。一方では、授業時数の削減から、児童・生徒の学力低下を危ぐする指摘もあり、授業時数の確保のため、夏季休業日の短縮や二学期制の導入等が工夫されている。

 特に義務教育は学校、家庭、地域社会等の強固な連携の上で成り立っているが、教育指導に直接携わる教師の力量は、子供の学力や人格形成に大きな影響を与える。それだけに教師に対する期待は大きく、また重い責任が課せられている。

 明るく生き生きと学習や運動などに励んでいる児童・生徒、またその学級を観察すると、指導者の学級担任や教科担任の共通した教師像の一面が感じとれる。それは進取的で、しかも謙虚な態度で児童・生徒や同僚、保護者、地域社会からいつも学びとり、自分の素養を高めている教師である。いつも学んでいこうとする姿勢が児童・生徒に安心感と信頼感を与え、尊敬の念が意欲に結びついているのではないかと思える。

 研さんに励んでいる教師がいる半面、新聞やテレビで教師の不祥事が報じられるたびに心が痛み、情けなさを感じる。児童・生徒や保護者の心に与える傷の深さを考えてほしい。

 いまでは、どこの学校にも一般の人たちが算数・数学や国語等の指導助手、あるいは何らかの補助教員として指導に当たっている。この人たちの中には、専任者以上の指導力を発揮して効果を上げている方も見られるという。このことは深刻に受け止めなければいけない。

 少子化は保護者にとって、わが子の教育にますます真剣にならざるを得ない宿命的なものとなってきており、納税者として学校や教師の質の高さを強く求めていくのは必然である。学校や教師も選択される時代が迫ってきていることに気づいてほしい。われ以外みな師、謙虚に学び続け、自分を変えてゆくことができる人のみが、子供の力を伸ばす教師として成長し、生きがいのある素晴らしい教師生活が約束される時代になってきている。

(上毛新聞 2005年11月26日掲載)