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◎森林組合の役割大きい 林業の現状は、いまだかつて過去に例がないほど低迷している。林業が「業」として全く成り立たない今、森林所有者が山に関心を持たなくなるのは、致し方ないのではないだろうか。 地拵(じごしらえ)(苗木を植えるための床づくり)をし、苗木を植え、下刈り(植えた苗木の周囲の草刈り等)をし、その後、つる切り(植えた木に巻き付いたつるを切る)をしながら、除伐(雑木および劣生木の除去)をし、次に間伐(優良材生産のための間引き)もし、ようやく成長木となる。おおよそ、その間五十年の歳月をかけて伐期を迎えるのである。 それが今、スギの場合、切って市場まで持って行く費用と同額ぐらいにしか売り上げにならないことが多い。収入とならないため、森林所有者は山の手入れをする気にならないとあって、森林の荒廃が進んでいるのが現状である。 そして、森林所有者の後継者は勤めに出てしまい、山の仕事や境界が分からない「世代」になってしまっている。地域の森林を守るには、森林組合が技術を持って管理にあたらなければならない。 森林組合は、出資者である森林所有者で構成されている。一般会社でいえば株主だが、森林組合では組合員という。私の勤めている多野東部森林組合では、所有山林一ヘクタール以上を「正組合員」資格としていて、現在千四十八人の組合員がいる。 区域は藤岡市、鬼石町、吉井町の一市二町で、昭和五十一年二月に県内二番目の広域合併をして、現在三十年を迎えている。 全国的な傾向だが、森林組合では現場で作業する従業員、内業の職員とも、後継者を必要としている。しかし、双方とも林業技術を身につけるには、約十年を要するのである。 地球温暖化防止等、森林の持つ多面的機能の発揮が期待されている中、幸いなことに、当組合では森林に関心を持つ従業員が集まり、後継者不足もなく世代交代が順調に進んでいる。 こんなにIT化された時代であっても、現場だけは、彼らの長年の経験と腕(技術)に頼らざるを得ない。森林所有者が自己所有の山林の手入れができなければ、森林組合が代わって森林所有者の立場に立って、手入れをしていかなければならない、と認識している。 林業に関し、行政がさまざまな施策を打ち出している中で、森林組合が地域の森林および組合員のために活躍し、役割を果たしていかなければならない。当組合では、組合員の負担を極力軽減するために作業の効率化とコストの削減に努めてきたが、引き続き努力して地域の森林を守っていきたいと考えている。 (上毛新聞 2005年11月25日掲載) |