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◎地域活動で生きがいを 総務省が毎年実施している世論調査に「国民生活に関する世論調査」がある。その調査結果が公表されるたびに、今後の生活について「物の豊かさよりも心の豊かさに重きを置きたい」と考えている人が圧倒的に多い、ということが話題になる。 経済的にはほぼ安定し、消費材も豊富であることから、物質面よりも精神的な充足感を得たい、という意識が強まった結果であるといえよう。 そのことと相まって、市民生活を豊かにする「生涯学習」への関心が高まっている。しかも、学びたいこと、やりたいことを自分たちで企画して、生きがいづくりに励む人々が多くなっていることに注目したい。 今までは、例えば、教育委員会や公民館等がおぜん立てをし、市民に参加を呼びかけ、あらかじめ決められた学習を一定期間行うのが一般的な学習方法であったが、最近は市民自らが主体的に考え、活動するなどの形態が増加傾向にあることは間違いない。 すでに「手づくり音楽祭」「ほたるの里づくり」「文化の里づくり」「市民大学講座」等、各地で活発な活動が繰り広げられているが、いずれも同好の士が集まり、自分たちで企画をし、活動しているものばかりである。これらの活動を企画している人たちにお会いする機会があるが、みんな生き生きとしていて熱く夢を語っていて、どちらかというと承りの学習等では、見られなかった姿といえそうだ。 地域活動などボランティア活動にあっては、比較的女性がその多くを担ってきている現状だが、昨今話題となっている「団塊の世代」の人たちが今後、この地域活動にも多数参加し、新たな活動を展開していくことが期待される。 ここ数年で定年を迎え家庭や地域に戻り、そのつながりを深めていくであろうこの年代は、長年にわたり培ってきた知識や技術、知恵を有する人材の宝庫ともいえる。このような人たちが、地域づくり、自分づくり、生きがいづくりに思いをめぐらし、熱く語る時がすぐそこに来ているといえよう。 しかし、そこに課題がないとは言えない。会社人間としてひたすら突っ走ってきた、いわゆる企業戦士とも言われて生きてきたこの世代の人々が、何の抵抗もなく地域の担い手として軟着陸ができるだろうか。 社会情勢の急激な変化のなか、年金問題等もあり、その未来は不透明で安心できるものではないにしても、個人的な充実感の追求を超えて、さらに奥深い生きがいを求めて地域活動に一歩足を進めてほしいものと願わずにはいられない。 (上毛新聞 2005年11月24日掲載) |