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さんすい森のリゾート社長 山田 直彦さん(みなかみ町湯原)

【略歴】法政大建築学科卒。東京でホテル経営のコンサルタント会社に6年間勤務後、帰郷してピザ専門店と和食の店を経営。湯原温泉街振興会副会長。

観光地・水上の再生


◎魅力ある地域づくりを

 私は旧水上町で生まれ育ちました。そして高校卒業後、東京の大学を出てそのまま社会人となりました。およそ十二年間東京で暮らした後、三十歳のときに水上へ戻りました。その理由は、水上が好きだったからです。

 水上はかつて、団体旅行でもてはやされた温泉地です。当時は街を行くお客さま同士の肩がぶつかり合って、けんかになるほどにぎやかだったそうです。その後、上越新幹線、関越自動車道の開通、温泉ブーム、バブル経済など外的要因によって、その恩恵を受ける形でお客さまが増えてきました。しかし、バブル経済の崩壊後、その勢いは止まり、平成七年ごろをピークにお客さまの数は年々減少の一途をたどっています。

 さらに昨年は、温泉偽装表示問題に始まり、度重なる台風、新潟県中越地震とトリプルパンチを受け、水上町は危機的な状況に陥りました。町では緊急対策として「十万人増客大作戦会議」を設立し、何とか立ち直りを図ろうとしていますが、なかなかお客さまが戻ってこないのが現状です。

 ただ私は今の状況が、不景気や災害など外的要因によるものだけではないと考えます。お客さまの旅行形態は、かつての団体旅行から家族・グループ旅行へと変化し、旅行の主役は女性へと移行しました。こういった傾向は、かなり前から始まっていたはずです。

 しかし、団体旅行向けにつくられてきた水上は、旧態依然のままで何も変わっていません。確かに個々の努力により潤っている所はありますが、観光地としての全体的なイメージが何も変わっていないのです。それが今の結果を招いているのだと思います。抜本的な改革なしには、以前のようなにぎわいを取り戻すことは不可能です。

 私は今年、四十歳を迎えます。こちらへ戻ってちょうど十年がたちました。そして、これからもこの大好きな町で人生を過ごしていきたいと思っていますし、自分の子供たちにもそうあってほしいと願っています。そのためにも、この町を魅力ある観光地へとつくり替えていかなければなりません。そしてそれは誰に頼るのでもなく、われわれ自らがやらなければならないのです。

 私は「地域づくり」を進める上で、「個」の成功なしに「地域」の魅力づくり、発展はあり得ないと考えています。たとえ小さくても光り輝く魅力的なお店が、その地域に百軒あれば、百の輝きを持つ魅力的な地域となります。だから、そのためにもまず自らが頑張らなければなりません。自分の事業を発展させる、それが大切な一歩だと思います。そしてそれをベースに、みんなで知恵を出し合って「地域の魅力づくり」を進めていくことが重要となるのです。

 先月一日に月夜野町、新治村と合併し、新しい「みなかみ町」が誕生しました。これも良いきっかけではないでしょうか。町民が一丸となって、新しい魅力ある観光地を築いていければと考えます。私はきっと成功すると確信しています。なぜなら、ここは本当に素晴らしい町だからです。

(上毛新聞 2005年11月21日掲載)