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昭和村商工会事務局長 根岸 秀樹さん(昭和村貝野瀬)

【略歴】沼田高校卒。昭和村役場の住民課長、議会事務局長、企画課長などを歴任。定年後、同村商工会事務局長に就任した。NPO法人「清流の会」事務局長。

「棲む」ということ


◎もっと真剣に考える時

 私たちは地球に棲(す)んでいます。その地球は太陽系の中でも一番美しく、豊かな生命をはぐくんでいます。

 そして太陽系という宇宙に組み込まれ、公道を一周すると、「春」「夏」「秋」「冬」と季節が巡り、一年という時間が過ぎていきます。また「明」「暗」が繰り返され、二十四時間かけて自転し一日は終わります。地球上の大気も気流という流れをつくり、「風」として人間に語りかけてきます。海を見れば一見穏やかに見えますが、海流となって地球を回っています。

 人間に欠かすことのできない大切な水は「水蒸気」「雲」「氷」「雪」「雨」等それぞれパフォーマンスの形は違いますが、潤いを与えています。

 茂る木々は私たちに木陰をつくり、そよ風を送り、すがすがしさを与えてくれます。その木々も地球の公転に合わせ新緑が芽吹き、日増しに葉緑素を増し、二酸化炭素を固定し自然浄化や快適な住環境を提供して棲むものに心地よい空間をつくったり、小動物や草食動物の餌になり、多くの動物をはぐくんでいます。やがて青々とした木々の葉の葉緑素もその使命を終え、葉はそれぞれ思い思いの色に染め上げ、冬という季節を迎えて、その使命が終わります。

 地上に落ちた葉は動植物の保温材として、また、有機質として生命をはぐくむエネルギーとなります。それは小動物や微生物の餌となり、分解されて最後は無機質化されます。無機質化された物質は養分として水に溶け、植物の毛根から吸収されて樹液となり、植物の中を回って新たな息吹を生み、新しい循環が始まります。

 動物も大小にかかわらず生命維持のために他の生命体を取り込み、それをエネルギーとして燃焼させ活動します。養分に分解されない残渣(ざんさ)は糞(ふん)という形で放出され、別の動物や微生物の養分として取り込まれ、最後は無機質化されます。われわれは、これを「食物連鎖」と呼んでいます。自然界はこの鎖が切れないよう「共存共栄」という摂理を構築しました。それは弱いものをたくさん作り、強いものを少なくし、その形をピラミッド型とし、安定を保っています。

 この型は、より多くの生命体が生存することによって持続的な維持を可能にしてきました。自然界はピラミッド型をより強固にするとともに、豊かさを維持するために多くの生命をはぐくみ、存在させてきました。それは自然界の神秘的な知恵であり、真理なのだと思います。

 この流れは長い時間をゆっくりゆっくりと、そこに棲むものが一番癒やされる空間やシステムを構築したのだと思います。ゆえに、この棲み処(か)には多くの生命が共存共栄しないと、美しく心地よい空間を保つことができない仕組みになっているのだと思います。

 われわれはいつの間にか自然との間に距離を置き、われわれ本意の環境を求めたために今、不可思議なことが起き始めているような気がします。「棲む」ということをもっと真剣に考える時かもしれません。

(上毛新聞 2005年11月20日掲載)