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NPO法人新里昆虫研究会理事長 小池 文司さん(桐生市新里町)

【略歴】東洋大卒。中学校教諭などを経て、すぎの子幼稚園、おおぞら保育園理事長。99年に発足し、03年にNPO法人に認証された新里昆虫研究会理事長。

古里づくり


◎夢は次世代のために

 改革の名のもとに、全国的に市町村合併の嵐が巻き起こっている。市町村合併に伴う住民の賛否両論は当然起こり得ることだが、合併により古里の特色ある文化が消滅してしまう場合も多々ある。また、現代社会は核家族化、個性化に伴い、家族のきずなや地域性が薄れて、地域交流活動が崩壊状態の地域も増加の傾向にあることもその要因であろう。

 一方で、合併を機会に地域の若者たちなどが主体的に町おこし活動を盛り上げて、以前の地域の文化を礎にして、新しい地域、古里の文化を発展させているところもある。地域文化の盛衰は、市民と行政当局との一体化した協力態勢いかんにかかわってくる。

 当会は「昆虫王国 新里づくり」をスローガンに、旧新里村の豊かな自然環境の再生活動を長年にわたって実施してきた。この再生活動は高度経済成長期を経て、近代化がもたらした農村の自然環境の荒廃を憂い、次世代の子供たちに自然の豊かな古里を継承したいとの思いを強く抱いた仲間たちが立ち上がって、今日に至っている。

 主な活動は、地域の豊かな自然環境を再生保全し、生態系と生物多様性を確保するための里地里山の再生活動、ホタル生息地の調査や保護活動、河川道路清掃活動などである。こうした活動には多くの会員の参加と、中学生ボランティアや町内の企業の社員たちが地域貢献の一環として大勢の家族連れで支援していただき、感謝している。

 また、自然を生かした触れ合いの場づくりとして、会員の活動基地「新里自然体験村」では昆虫フェスティバル・昆虫アート展を開催。テントを張って一泊二日で夏休み子供自然体験教室も実施し、ともに県内各地から参加者を得て好評を博している。

 これらの活動は、県が推進する「一郷一学」に「昆虫」が採用され、県や市など行政機関に支援していただいて心強いものがある。

 県の「ぐんま昆虫の森」建設に当たって、会員たちは各種ボランティアとして参加、協力してきた。八月に昆虫の森がオープンし、現在では昆虫の森の整備、運営管理に参画させていただき、地域住民と意を一つにして全面的な協力態勢を取っている。

 旧新里村では今年、桐生市との合併や昆虫の森のオープンと歴史的な大事業があった。当会は「ぐんま昆虫の森」を起爆剤にした新しい郷土・古里づくりを行政当局や各種団体に提言している。それは、赤城山ろくの起伏に富んだ豊かな自然を最大限に生かし、自然と人間との共生が確保された、新しい地域社会の実現である。

 そのためには、会員のボランティア活動のみでは不可能である。地域社会の理解、協力や行政当局との協働を推進しながら、次世代の子供たちのために、楽しい夢を見たいと思っている。

(上毛新聞 2005年10月29日掲載)