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◎寄り添うことで開ける 私が親になって二十五年、子供の成長とともに、私自身も親として成長させてもらいました。わが子三人三様の喜びや楽しみ、そして、悲しみや苦しみなどを乗り越えて、家族としてまとまってきたような気がします。 子供が小さいころは、「早寝早起き」「好き嫌いなく何でも食べる」「うそをついてはいけない」「約束は守る」など、基本的なことに心を砕いていればよかったのですが、子供が思春期になるととても難しくなります。ましてや、わが家では不登校の問題と重なり、互いの気持ちがすれ違いになり、とても苦しみました。今にして思うと、子供の方がいろいろなことを分かっていて、親の方が子供の心を分からなかったのだと思います。 「なぜ学校に行かないの?」「これからどうするの?」といった質問に、「親の言う答えは分かっているから、俺は何も話さない」と言ったきり、息子は何も話しません。そう言われた私は困りましたが、一人で苦しんでいる息子を見捨てるわけにはいきません。また、辛いとか苦しいとかといった気持ちは分かります。そして、心を開いて話をしてくれるには、親が答えを持っていてはいけないのだということを悩んだ末に気がつきました。 親子は「あうん」の呼吸で生きているようなところがありますから、知らず知らずのうちに親の思いを子供にすり込んでいます。子供は「親に愛されたい」「親の期待に応えたい」と思っています。ですから、口に出さなくても親の思いは通じているのでしょう。子供が素直な気持ちで口を開くには、親が自分の枠を外すことです。 私は真っさらな気持ちで「苦しんでいるあなたのことがとても心配なの。学校に行ってほしいとは思うけど、お父さんとお母さんは、あなたの決めたことを応援するからね」と言いました。この時点で、子供の心に寄り添うことができたような気がします。後は、天あま照てらすおおみかみ大御神ではありませんが、子供が心の扉をカチャンと開けるのを待つだけです。心の扉は、外側には取っ手がなくて、内側からしか開けることができないそうです。 安心して何でも話せる=信頼関係ができました。そして、辛い気持ちも分かる=共感することもできました。ここから子供が話し始めるわけですが、子供の言いなりになる必要はないと思います。親としての考えや意見も出して、お互いを尊重しながら対話をすればいいのです。苦労はありますが、その先には大いなる楽しみが待っているはずです。 あれから十年、わが家の子供たちは「親が自分たちを認めて応援してくれて感謝している。これからは親に心配かけないように自分の力でやっていこうと思う」と言ってくれます。子供は本当に親思いです。その子供の心を、親の期待や世間体でつぶすことなく、まあるく膨らましていってほしいと思います。 (上毛新聞 2005年10月21日掲載) |