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万座スキー学校長 黒岩 達介さん(嬬恋村干俣)

【略歴】高崎高校中退。オーストリア国立スキー学校に留学。帰国後、万座スキー学校を創立、校長に就任。日本職業スキー教師協会常務理事などを歴任した。

NIEの意義


◎新聞から実社会を学ぶ

 「NIE」をご存じだろうか。「ニュースペーパー・イン・エデュケーション」の略で、「教育に新聞を」というのが、そもそもの意味である。日本においても新聞活用学習の歴史は古く、明治時代にさかのぼるが、それは個々の教師の創意工夫によるものであったという。今で言うNIEは教育界と新聞界が協力し、組織的に推進している運動であり、個々の教師のみならず学校全体として取り組んでいる。

 きょうから「新聞週間」でもあるため、このNIE運動をざっと振り返ってみよう。

 わが国のNIEは、一九八五年に開催された第三十八回新聞大会で、当時の日本新聞協会長が教育界に向けてNIE運動を提唱したことから始まり、二十年の歳月を経ている。

 八九年十一月、私は東京・日比谷の新聞協会を訪ね、翌年、北区に開校する日本社会体育専門学校の一般教養科目の一教科に新聞を活用した授業を取り入れたい旨を伝え、併せて講師派遣を打診した。お会いしたのが同協会のNIE専門部会長で、部会長自らが快く講師を引き受けてくれた。

 この部会は、欧米をはじめ海外のNIE運動の実情をつぶさに視察し、長期的、多角的な教育運動として教育界、新聞界双方で真剣に議論を重ねた。その結果、子供から若者の「活字離れ」対策としての期待も含め、わが国でもNIEを教育と新聞の役割にかかわる本質的な研究課題として取り組む必要があるとし、現在の運動の発展につながっている。

 NIEが小・中・高校において具体的にどのように実践されているのかについては、『NIE小学校・中学校実践事例集』(妹尾彰編著、晩成書房)、『新聞でこんな学力がつく』(日本NIE研究会著、東洋館出版社)に詳しく、日本新聞教育文化財団をはじめ、全国各地のNIE推進協議会が刊行しているNIE実践報告書やNIEガイドブックなどに参考例が多く見られた。

 NIE活動は(1)学校におけるNIE(2)家庭におけるNIE(3)生涯学習におけるNIE|の三分野へ発展し、その対象は広がりを見せている。

 学校におけるNIEでは、総合学習が導入された今、NIEと学力についての議論がされるようになった。もちろん基礎学力の重要性は論をまたないが、「学力とは何か」については、いささか意見が分かれる。それは、教科書だけを理解しペーパーテストの得点が上がることを学力の向上とみなすか、教科書によって基礎学力をしっかり身につけながら読書や新聞を読むことで幅広い知識や読解力、文章力を向上させるなど目に見えない能力がつくことを含めて学力の向上とみるかの相違である。

 学校におけるNIEは、家庭で親と子が新聞を読み、話し合うことに発展した。今日の社会情勢を考えると、新聞を媒体にした親子の対話は、子供の変化や成長に好影響をもたらすものと期待する声が多い。最近では、世界的に家庭におけるNIEが重要視されるようになっている。人は新聞を通し、実社会から学ぶことが実に多い。

(上毛新聞 2005年10月15日掲載)