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コーチングハーベスト代表 小林 香さん(吉岡町小倉)

【略歴】渋川市生まれ。新潟大学教育学部卒。企業での人事・労務・研修担当を経て、コーチとして独立。日本コーチ協会群馬チャプター代表。

君と僕が〈僕たち〉に


◎一緒にいるの気持ちで

 コーチの仕事を始めて、クライアントさんのその方らしい充実した人生を送るお手伝いをさせてもらっている中で、ふと気がつくことがあります。それは、人は心の奥の方では多かれ少なかれ、孤独を感じているのだなということです。その人の周りにどんなに人がいたとしても、どこか寂しい気持ちが隠れていたりします。

 研修講師をさせていただく際に、私はよく皆さんに次のようなことを伺います。「今までに十分に自分の話を聞いてもらったという体験のある方は手を挙げてください」。この質問に対して、どれくらいの方が手を挙げられると思いますか?

 今までに私がお聞きしたうちでは、話を十分に聞いてもらったことのある方が五割を超えたことはありません。一割にも満たないこともよくあります。毎日、私たちは会話をしているのに、多くの方が十分に聞いてもらったことがないと感じているのです。この部分に、人が感じている孤独の原因があるのではないかと私は思うのです。

 「一日の一番いいとき、それは<君>と<僕>が<僕たち>になるとき」  これは、ディズニーアニメの『くまのプーさん』の中で、プーさんが大好きな親友のクリストファー・ロビンに会えた時の言葉です。「<君>と<僕>が<僕たち>になるとき」。私の心の中で、この言葉は何度も何度もこだまします。

 先日、保育園から帰った息子が「今日、先生に怒られた」と話してきました。一瞬、私は「何して怒られたの?」と問い詰めるように聞きそうになりました。慌てて心を切り替えて、「そう、怒られたの」と返事だけをしました。すると、私が何も言わなくても続けて息子は自分がした失敗を話してくれました。聞いていた私は、ただ相づちを打っていただけでしたが、息子の気持ちの隣にいられた感じがしました。私と息子で「<君>と<僕>が<僕たち>になるとき」を味わえた瞬間でした。

 人はとかく人の話を聞くとき、良いとか悪いとか評価や批判をしてしまいがちです。しかし、そのことは話している人にとって本当に聞いてもらっているという実感は得られないでしょう。十分に話を聞くということは、ただその人のそばに一緒にいるよということを伝える、そういう気持ちで接することが大切なのです。

 人と人とのコミュニケーションで幸せを感じられる時、それは「<君>と<僕>が<僕たち>になるとき」なのではないでしょうか。

 最後に一つ、ご案内です。私も携わっている日本コーチ協会群馬チャプターの主催で、県内の方にコーチングを広く知っていただき、体験していただくイベント「群馬コーチングフェア2005 知っていて良かったコーチング 聴くが効く」を来月二十七日午後一時から県公社総合ビル(前橋市)で開きます。詳しくは日本コーチ協会群馬チャプターのホームページ(http://www.gunchap.net/katudou.html)をご覧ください。

(上毛新聞 2005年10月13日掲載)