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◎生きる力を身につけて 今年も、県立東毛少年自然の家を事務局として、文部科学省委託事業である「悩みを抱える青少年を対象とした体験活動推進事業・ぐんまいきいきチャレンジ」が開催されている。不登校の小中学生を対象とし、県内各地を会場として、夏から冬まで合計で約二十日間の自然体験活動などを行う。 この事業は、四年前から始まり現在に至っているが、自然の家の職員のほか、心理学担当の大学教授、家庭相談員、臨床心理士、野外教育や自然体験活動の専門家などがそれぞれの得意分野を生かしつつ、協力し合う形でスタッフとして参加している。 事業内容は多彩だ。乗馬、カヌー、ロッククライミング、陶芸、ネイチャーアート、クラフト、ロングハイク、アウトドアクッキング、キャンプ、マウンテンバイクツーリング、ナイトハイクなどが、子供たちの様子を見ながら臨機応変に組み合わされ、実施されていく。 この自由な雰囲気の中では、参加した子供たちが思わぬ力を発揮したり、得意分野で活躍できた子が自信をつける場面に何度となく出くわした。絶壁をフリークライミングで登り切った子が見せた笑顔、乗馬で瞬く間に顔つきが変わっていった中学生、たき火をしながら語ってくれた本音。どの子もみんな人間の根源が発露した瞬間だった。 こんな素晴らしい事業でありながら、参加者の募集には毎年苦労する。自然の家の職員が広報活動に汗を流すが、参加者増にはなかなか結びつかない。なぜか。原因はいくつかあるが、その一つは、協力依頼先の適応指導教室に強烈な縄張り意識があり、ごく一部の指導教室を除き、ほとんどの場合、協力を得られないことである。 自分のところの子供たちをほかの事業になど参加させられないという考え方には、子供のことより、適応指導教室と職員のメンツやプライド、実績主義が透けて見えてしまうのは私だけだろうか。もう一つは、学校現場の反応の鈍さである。自分のクラスの子のことは自分で何とかしなければ、自校で何とかしなければという囲い込み意識が、子供たちに必要とされる情報を遠ざけてしまっているように思えてならない。 こうした事情は、県教委ではもう分かっているはずだ。対応も検討中だろう。だが、生半可な対応策は問題をぼかすばかりだ。適応指導教室は子供たちを学校へ戻すことばかりを目的にするのではなく、子供たちが将来自立し、社会の一員としてしっかり生活できるような、まさに「生きる力」をつけさせることを目的にすべきである。それには、学校関係者ばかりの指導教室を廃止し、民間の力も導入した新たな組織づくりが急務である。 学校も教職員も、もっと外部の情報に目を向けてほしい。不登校の子たちに本当に必要なものは、おそらく普通の学校生活で見つけることはできないのだろうから。 (上毛新聞 2005年10月10日掲載) |