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◎体験することが大切だ 八月十一日から十六日まで、「群馬おもしろ科学展」が高崎高島屋で開催された。群馬大学が「理科体験教室」として企画・主催し、県をはじめとする自治体、教育委員会、企業などの後援を得て実現したもので、真夏の猛暑にもかかわらず、連日千人を超す親子連れでにぎわった。 実演展示は工学部からのものが最も多かったが、教育学部、医学部からの出展も加わり、変化に富んだものになった。日程を前後半に分け、それぞれに二十弱の異なるテーマの展示を次々に回る形式をとっていた。 私たちの研究室も「細菌の運動の世界を覗のぞいてみよう」というテーマで、人間の腸の中にいる細菌が泳ぐ様子を顕微鏡で観察し、シャーレを使った泳ぎを調べる実験を体験する展示を行った。初めての試みで興味を持ってくれるか心配したが、予想を上回る数の親子が訪れ、てんやわんやの状態になった。 印象的だったのは、顕微鏡を覗いたときの反応で、すごいと声をあげる子がいると思えば、気持ち悪いと言う子もいたことだ。そういう反応に対しては、腸内細菌が自分たちのために役に立っていることを説明することで親子ともども納得してくれたようだ。もう一つは、実際に手を動かす実験で子供たちは目を輝かせている様子で、結果がどうなるのかを楽しみにしていることがうかがえた。 他のブースの様子も覗いてみたが、どこも盛況で、特に低温実験、立体模型やモーターの製作に人気が集まっていた。総じて言えることは話として聴くことより、実際に見たり触ったりすることの重要性で、理科が体験に基づくものであることを再認識した。 そういう実感の一方で、運営の難しさや現場にいる人間の負担の大きさがかなり強く感じられた。ほんの三日間とはいえ、朝から夕方までぶっ通しで見学者の相手をしているのである。不慣れな面も手伝って、疲労の色を隠せない担当者の姿も目立ったようだ。 ただ、後日、見学者の感想を読んでみたところ、そこには「また来たい」という言葉が躍っていた。初めての体験、面白い現象、手を動かす喜びなどが、そういう感想を引き出したのだろう。ほかにも、毎年行ってほしいという親の意見もみられた。 たくさんの親子が本当に楽しんでいる様子を見ることで、会期中の説明の疲れも吹っ飛んでいたが、全体としては大変な労力を要することであった。計画の中心となった人々の努力も並大抵ではなく、好評であったからこそ、将来を真剣に考えねばならないと思う。 大学による地域貢献の一環として実施された事業だが、実演の重要性を再認識させたわけで、その実施に誰が携わるのかは別の形態があっても良いのではないか。子供たちに普段から接している小中学校の教師にも期待したいし、親にも可能性があると思う。 始めることの難しさを乗り越えたから、次は続けることの難しさの克服であろう。 (上毛新聞 2005年10月7日掲載) |