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◎専門技術の育成に力を 二〇〇七年が身近に感じられるこのごろ、世の中ではさまざまに社会の在り方を揺すぶる問題として、〇七年問題がにわかに注目を集めてきている。団塊の世代の一人として、今になって慌てても遅いのじゃないの、と言いたいところでもある。なにせ、高度経済成長を支えてきたこの世代は、競争社会に振り回され、企業戦士としていや応もなく巻き込まれて生きてきた。そして、バフルがはじけて日本社会と企業は、この世代を「生き残るため」としてあっさりと切り捨ててきたのである。 何もここで嫌みを言うつもりはないが、切り捨てたのは現場で働く人だけでなく、その人が培ってきた「技術」と「人間力」も一緒に切り捨ててきた。彼らが定年を迎える今ごろになって「技術」を確保したいなどと慌てても、身から出たさびだとも言いたいが…。 しかし、よく身の回りを見渡してみると、どうやら団塊の世代のその前の世代から、こうした傾向は確かにあった。いわゆる個人商店や中小企業の専門技術を持つ人に後継者がいない、と叫ばれていたではありませんか。ここにきて個人商店はしかたないが企業は困る―などという論調に聞こえてくるのはおかしな話だ。いずれにしても団塊の世代は、今こそ本当の実力を見せてやるために、もう一踏ん張りしたいものである。 実は映画や演劇、そして音楽やダンスなどの芸術文化のジャンルでも、同じような症状が発生している。ここでも「現場の専門技術」を習得する人が極端に少ないのである。映画について言えば、映画を上映するにあたって会場の確保、映写技師、電源の確保、照明の扱い、スクリーンの設置、音響の扱い等々、さらに言えばチラシ、ポスターはどうして作るのかなど、一つの映画を上映するにあたっても、これだけの技術を要する現場スタッフがそろわないと実現しない。 県内で上映環境が整っている施設は都市部に集中しているが、そこでさえ、必ずしも万全ではない。町村で映画上映を行うことは、都市部以上に専門技術を持つスタッフがいないと実現は不可能であろう。そして、映画より演劇、音楽、ダンスはさらに多くの技術を要する。こうしたことから、必然的に中央のプロ集団による公演が県内各所で取り組まれる結果となっていることは否めない。 今、このような現状の中でロックバンドのコンサート、モダンダンスの公演、公共施設以外での演劇公演、そして映画館のない地域での映画上映などにかかわるプロデューサー、ディレクターの間で「現場の専門技術」を学習し、実践できるスタッフの養成を始めようとする動きが生まれてきている。 地方での芸術文化が本格的に根を下ろし、よりレベルを上げるためには、アーティストの育成とともに、ここにこそ力を注ぐ必要がある。それは既得権の侵害につながるとおっしゃる方々もいるとは思うが、今や現実はそれ以上に危機的な状況に追い込まれている。今こそ、それぞれの分野で、このような技術を持った人たちが積極的に専門現場スタッフの育成に向けて一肌脱いでいただき、こうした機会を数多く実施していきたいものである。 (上毛新聞 2005年10月4日掲載) |