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◎リーダーとして歩んで 戦後六十年。私たちは大きな節目の年を迎えている。今年の夏も広島、長崎、沖縄をはじめ、全国各地で戦争の犠牲となった人々の霊を慰める追悼の行事が行われた。私も小学生時代、戦闘機による機銃掃射とB29の爆撃、焼夷(しょうい)弾攻撃におびえ、何度も何度も防空壕ごうの中へ逃げ込んだ体験を今も鮮明に思い出す。ましてや、肉親を失った人々、戦禍の中を逃げ惑い、九死に一生を得た人々にとっては忘れられない日々であったろう。 先日、私の寺で、ある家族の両親の法要が行われた。ご両親の塔婆とともに、四人のお子さんの塔婆も依頼された。施主さんは家の跡を取られた息子さんで、塔婆のお子さんは施主さんの四人のごきょうだいであった。 終戦直後、中国大陸から祖国日本への帰国途上、食糧難による飢えと病気で、成すすべもなく四人のお子さん(長女十歳、二女八歳、三女四歳、三男一歳)を昭和二十年九月二日から二十八日の間に次々と亡くされた。 戦禍の残る中、大陸侵略国家の国民、敗戦国の国民として、逃げるような祖国への道、子どもを次々と亡くし、その亡きがらすら祖国に持ち帰ることのできなかった悲惨な体験をしたご両親。そのご両親も今はすでに亡くなられ、一人生存されておられるご長男が法要をされた。同席したお孫さん、ひ孫さんたちの前で、当時の様子を語られ、今日の平和の貴さ、二度と戦争を起こしてはならないことを涙を浮かべながら話された。私もこの話に強く胸を打たれた。 今、日本には世界に誇れる平和憲法がある。日本の掲げるその平和憲法は国連の結成趣旨に最も沿ったものであり、平和を希求する精神に沿ったものである。日本は世界のどこの国にもない〈戦争の放棄〉という崇高な憲法を保持している唯一の国だ。 この平和憲法を大きく掲げてこそ、国連安全保障理事会常任理事国入りの大きな意義があり、世界のリーダー足り得るものだと考える。 広島、長崎と悲惨な被爆体験をした両市長が毎年訴えを世界に発信し、地球上からの核廃絶を呼びかけている。まさに日本は地球上からのすべての核兵器の廃絶を世界の国々に呼びかけるリーダーとして振る舞うべき国ではないか。しかし、世界最大の核兵器保有国・米国寄りの姿は、世界の多くの国々にどう映っているのだろうか。 日本国憲法に示す「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」を堅持し、軍事にかける膨大な費用を国民の生活向上に当てたら、日本国民の生活水準は大きく向上するのではないだろうか。 やがて、諸国も膨大な軍事費の支出や戦争のおろかさに気付き、世界は平和な方向に大きく歩みはじめるだろう。今こそ、日本は世界のリーダーとしての歩みを進めてほしい。 (上毛新聞 2005年9月29日掲載) |