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◎皆で知恵を出し合おう 産業を興し山村を活性化させることは、多くの町、村にとって大きな課題である。大手企業や観光拠点のない山村の財源は交付税に依存し、事業は国、県のさまざまな補助事業等に支えられてきた。ここ数年の間に、地域振興の一環として全国各地に道の駅や観光施設が建設された。それぞれ地域の環境は全く違うのに、他の町村が造ったのでわが町、村も建設しよう―など、安易な発想であるケースが多い。 国、県も単純に実現性のない計画書をうのみにし、簡単に計画を容認してきたことも事実である。結果はどうだろうか。事業を行って赤字を計上するところが多く、赤字が出ても、自分の懐が痛む者はなく、揚げ句の果てには「農業、観光振興だからやむを得ない」と大儀を掲げ、正当化してしまう始末。そこには責任を負う者は存在しないのである。 世間で言う「税金の無駄遣い、箱物行政」そのものなのである。事業を行う場合は長期を見通し、地域住民のために今、何が必要なのかを慎重に考え、経営に当たっては、その道で責任のもてるプロを育成すべきであると思う。 私の住む上野村は、前村長、黒沢丈夫氏の強力なリーダーシップの下、四十年も前から「経済的に豊かな上野村」をスローガンに掲げ、山村が自立自村するためには村の産業振興が不可欠として木工や観光事業、農業振興など、村が計画的に深くかかわりをもって事業を後押ししてきた。木工産業では、地元の広葉樹を活用した木工品を世に広め、ウッディー上野村を全国に知らしめて木工の里を定着させた。 また、観光事業では国民宿舎やまびこ荘、ビラせせらぎ、不二洞、スカイブリッジ、農業振興ではイノブタや十石みそなど数々の名施設や名産品をゼロから立ち上げ、作り上げた。これらの事業主体は上野村森林組合、同村振興公社、同村農協の三事業体が受け皿となり、上野村役場を中心に「上野村一家」と称し、村を挙げて取り組んだ。紆う余よ曲折を経ながらも、それぞれの事業は経営に一定の安定を見るまでに成長している。 現在、三事業体で百五十人ほどが村内外から雇用され、唯一の就業の場所となっており、村の過疎対策である人口増という大きな政策の一翼も担っている。財政が厳しくなる今後、村の活路はどうあるべきか。国、県は市町村の合併推進指導を積極的に推進しているが、近隣の合併町村を目の当たりにすると、産業の停滞、住民へのサービスの低下は顕著なものがある。合併は「百害あって一利なし」であり、霞が関官僚の机上の論拠であると思わざるを得ないのである。 小さければ、小さいなりに地域に即した交付税の使い方や補助事業の在り方があるはずで、行政と地域住民で知恵を出し合い、真剣に考えて取り組めば、上野村に見られる状況は例外ではないと思うのだが、どうだろうか。 (上毛新聞 2005年9月20日掲載) |