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◎日本はもっと理解を 今の日本で失われつつある「日本人としての誇り」が、日系人の心の中に残っているのを知っている方がいらっしゃるでしょうか。 一九〇八年にブラジルへの移民が開始されてから、百年がたとうとしています。当時、ブラジルに渡った日本人は「日本人としての誇りを忘れず、恥ずかしいことはするな」という厳しいしつけを受けていました。その誇り高い日本人に育てられた日系二世、そしてそれを引き継いでいる三世の人たちの中には、今の日本人よりも日本人らしい気持ちを子供たちに伝えている人が大勢います。 彼らは、日本人が持つ「勤勉」という美徳を武器に、ブラジルで日本の農作物を普及させて食文化を豊かにし、事業を興し経済的貢献をするなど、「良き市民」の代表格としてブラジル社会に広く認められる存在となっています。 「自分は日本人だ」と思いながら育った日系人たちが今、日本に戻ってきています。しかし、彼らは祖国であると思っていた日本で外国人扱いされ、がくぜんとしています。 さらに、日系人が帰化申請を行うお手伝いをさせていただく度に、あまりにも高いハードルに情けなく、深い悲しみを感じます。 フランス、イタリア、ポルトガル等の国での帰化は、祖先がその国の人であることさえ証明できれば、簡単に帰化が認められます。しかし、日本では帰化申請の許可を受けるにあたり、出生国の国籍証明以外にも、ブラジルに居る親兄弟の出生証明書や同意書など、そろえなければならない証明書が多く、しかも審査に大変な時間を必要とします。最悪の場合、申請が通らず、再び手続きを一からやり直さなければならないことも多々あります。 その度に、少しずつ私の心の中に「彼らの祖先は日本人と分かっているのに、なぜ?」と納得のいかない気持ちが募ります。 労働条件の悪いブラジルで、日本人としての誇りを失わずに頑張って一生懸命働き、日本人の血を引き継いでいる人たち、そして、ようやく祖国にその血を受け継いだ人たちが戻ってきたときの日本の対応に、「もう少し日本人の子あるいは孫であることを認め、見極めてほしい。日本人に戻ろうとしている人の受け入れを、もう少し緩和してほしい」と思わずにはいられません。 ブラジルでは「日本人」と言われ、日本に戻れば「ブラジル人」と言われる日系人の祖国は一体どこにあるのでしょう? こうした行政の対応を受けてもなお、「私は日本人の子孫です」と胸を張っています。 日本の出生率が低迷し、人口減少が間近に迫っている今、日本に永住しようと決めた日系人が、子供を産み育てています。そのような子供たちを日本人の子供と同様に育てていけば、将来、必ずや日本の力となってくれるはずです。そのためにも、日系人の受け入れにさらなる理解を示してほしいと願うばかりです。 (上毛新聞 2005年9月18日掲載) |