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NPO法人新里昆虫研究会理事長 小池 文司さん(桐生市新里町)

【略歴】東洋大卒。中学校教諭などを経て、すぎの子幼稚園、おおぞら保育園理事長。99年に発足し、03年にNPO法人に認証された新里昆虫研究会理事長。

子供たちの自然体験


◎地球環境考える契機に

 子供たちは、夏休み中の楽しかった思い出を胸に、また学校生活に戻っていった。この休みに、学校生活では経験できないような貴重な社会体験をしたものと思う。

 家族での年中行事の旅行もあったろう。子供会や学校、各機関が開催する自然体験教室などに参加した子供たちも多かったと思う。近年、子供たちの自然とのかかわりが激減していることもあり、夏休みなどを活用して意図的、計画的に自然の中で体験的な活動を実施する団体、機関が多くなっていることは喜ばしいことである。

 自然とのかかわりは幼児期から始まるが、この時期に最も影響を与えるのが母親である。母親が花や昆虫が好きで、自然志向であれば、幼児も同様な育ちがあるだろう。幼児は花や昆虫たちを友として遊びながら五感を磨き、命の大切さを知り、自然を体感し、自然への興味・関心を深めていくものである。幼児期の親子での自然へのかかわりが、その後の子供の心の成長にも大きく左右するものと思う。

 自然体験活動の内容をみると、幼児から初心者向けの一、二時間程度から、寝食をともにする四、五日間までと多岐にわたり、子供の年齢、能力や実態に合わせて選択できるような事業があるのもありがたい。

 先月開園した「ぐんま昆虫の森」では、子供たちが目を輝かせ、夢中になって昆虫たちを追い求めていた。その雑木林の樹液酒場では、カブトムシ、クワガタ、オオムラサキ、スズメバチなどが樹液を奪い合う場面を、子供たちは息を潜めて観察している。真夏の太陽の下の芝生広場では、子供たちが網を片手に「トノサマバッタをゲットした」などと歓声を上げていた。トンボの池の水辺では、ハグロトンボ、ミズスマシなどの水生昆虫たちが子供たちを楽しませている。この夏には、県内外各地からたくさんの子供たちや家族連れでにぎわった。軽やかな足取りで帰路につく子供たちの姿に、感動と充実感が満ちあふれていた。

 当会は夏の恒例行事「夏休み子供自然体験教室」を実施している。新里自然体験村で一泊二日する体験教室は、子供たちのテント張りから始まる。活動内容はネイチャーゲーム、自然観察会、標本作り、釣り、下草刈り、スイカ割りなどだ。

 真っ赤な夕日が浅間山に沈むと、最高の感動体験の夜行性昆虫調査が始まる。この調査は、白い布に強力なライトを当て、昆虫たちを誘い寄せるのである。カブトムシ、クワガタ、カメムシ、アゲハモドキなどの昆虫たち二十数種類が確認された。また、アブラゼミとヒグラシの羽化の瞬間にも立ち会えた。ヘイケボタルも子供たちを歓迎してくれた。そんな瞬間を子供たちは自分のカメラで撮り、記録にまとめた。

 子供たちの自然体験は、自然の不思議さや美しさ、神秘さなどを体感し、自然の大切さを知るとともに、地球環境をも考える強力なうねりになると確信する。

(上毛新聞 2005年9月8日掲載)