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「麺の里」両毛五市の会会長 小暮 高史さん(館林市本町)

【略歴】慶応大商学部、米ウィッテンバーグ大経済学部卒。館林うどん社長。全国乾麺協同組合連合会理事。麺めんのまち「うどんの里館林」振興会顧問。

農産物


◎地産地消より国際化を

 「地産地消」。響きのいい言葉です。その土地でとれた農産物、農産加工物をその地で消費する。生産者は消費者を特定、固定化でき、消費者は安心して地場である地元の生産物を利用できる。その目的のため、行政が生産や販路を支援する。

 こんな結構な政策はない。一体、誰が提唱したのでしょう。生産者や消費者にとって、ありがたいことと歓迎すべきなのでしょうか。結論をいえば、これは行政レベル(県)で言い出したか、もしそうでなくとも、その政策の推進は諸刃(もろば)の剣となるのではないでしょうか。

 この地産池消は、以前に提唱された「県産品愛用」とどう違うのでしょうか。県産品愛用は当時、その言葉の後ろに「運動」という文字が付いて使われていた記憶があります。すなわち「県産品愛用運動」ですが、最近ではほとんど死語に近い言葉です。定着しなかったといっても過言ではないと私は思います。

 なぜか? 理由は簡単です。県産品が必ずしも良質で安価であるとは限らないからです。誤解しないでほしいのですが、私自身が生産者だし、決して県産品をおとしめているわけでも過小評価しているわけでもありません。ただ、消費者は常に県産品かどうかを最優先に考慮して購入するわけではないということです。もちろん品質、価格が同等だったら、地域の商品を買ってくれるだろうと期待しています。

 私どもは、地域の農産物を購入、加工して商品にする立場にありますが、その原料が必ずしも最適ではないからです。ただ、これは農家の努力不足とか意欲の問題ではなく、土壌、気候とかの外部要因です。北海道で良いサツマイモがとれるのか、鹿児島でおいしいジャガイモができるかということです。また、農産物の課題として毎年均一の安定的な商品の提供というのが、狭い一地域で可能なのかということもあります。

 そして、消費者の立場からいえば、その町の地理的、交通状況から購買範囲が限定されてくるという点もあります。私の住む館林から、車ですと二十分走れば栃木県の佐野、足利、埼玉県の羽生、行田、茨城県の古河まで行けます。また、電車なら、一時間で北千住、一時間半なら上野、秋葉原、東京駅、日本橋まで可能です。一方、前橋、高崎までは車でも電車でも最低一時間半はかかります。

 地産地消は他の県からも反発を招き、他の県でもこれを進めます。物の流れが停滞するのです。むしろ、輸入に頼り切っている農産物ですが、海外でも通用する立派な農産物の輸出を奨励する方が、よほど生産者の励みにも誇りにもなります。メードイングンマの商品が世界市場を席巻する。こちらの方が夢があり、ロマンがあるように思えるのですが、いかがでしょう。

(上毛新聞 2005年8月31日掲載)