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前安中市社会福祉協議会長 清水 辰吉さん(安中市上後閑)

【略歴】中島航空技術学校卒。県職員として約40年間勤務。現職のころから福祉活動に尽力。県民生委員児童委員協議会副会長などを歴任し、今年3月まで安中市社会福祉協議会長。

卒業生の手紙を読んで


◎子供たちを励ましたい

 私が出入りしている地元の小学校は、山合いの小規模校であるが、今年三月の卒業式には例年よりも多い六人が学びやを巣立っていった。音楽室兼講堂での式典には、在校生と保護者と教職員のほか、卒業生の三倍近い来賓も列席し、送られるもの、送るもの、共に涙を堪えての美しい光景であった。

 ところが、半月ほど過ぎた日のことだった。外出から戻ると、わが家の玄関の上がりはなに旅の土産らしい小さな包みと私あての封書が置かれてあった。すぐさま開けてみると、便せんいっぱいに書かれた丁寧な手紙は、過日卒業していった児童の一人からで、その夜にはその子のお母さんからも「留守中に…」との電話をいただいた。私は胸を熱くして何度も読み返した。純な、多感な、そして真心こもるものであった。

 このたび、本人の許しを得たので、その全文をここに紹介する。読んでいただくことで、子供たちの健全育成に少しでも役立てば幸せであり、そして、大いに議論していただきたいと思う。


 先日は、ぼくたちの卒業式に来ていただきありがとうございました。辰吉おじさんには毎年の運動会や、ふれあい集会など、学校行事には必ず参加していただき、そのたびにおほめの言葉や、励ましの言葉をいただきました。

 その一言一言がぼくたちの自信となり、次もがんばるという気持ちにつながりました。在校生のみんなもきっと同じ気持ちだったと思います。

 ぼくは六年間喜びも悲しみも分かちあえる友達にかこまれ、そして熱心に勉強を見てくださる先生に教えられ、そのうえ、とても優しい地域のかたたちに支えられ幸せでした。今この時間もこうしたみなさまへの感謝の気持ちがあふれてきます。

 これからは大きな中学校という今までとまったくちがった環境の中で生活していきます。うれしいのか、悲しいのか自分でもよくわかりません。でも中学校へ行っても、六年間で学んだことを存分に発揮していこうと思います。六年間ほんとうにありがとうございました。


 その夜、私は時のたつのも忘れて、この子への返信に熱中した。純な子供たちへの思いが込み上げてきて、幾度も鼻をかみながら…。「これからも友達をたくさんつくって、悪や誘惑には絶対負けないで、それを信じています」とも書いた。

 学校後援会長と評議員と児童委員の立場上、通い続けた小学校。何も特別なことをしたはずはなく、ただ「元気だな」「よくやったね」「偉いぞ」などと声を掛け、肩をたたき、手を握り合うことくらいであったが、子供たちは満足していたのだった。「人は認められながら育っていく」と、書物で読んだのを思い出した。

 旧日本海軍連合艦隊の山本長官は「褒めてやらねば人は動かぬ」と部下の将兵たちに論じたと伝えられている。励ますことの大切さは、昔も今も変わりはない。

(上毛新聞 2005年8月22日掲載)