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月刊「マイ・リトル・タウン」編集発行人 遠藤 隆也さん(太田市新島町)

【略歴】18歳で上京、Uターン後の76年に「マイ・リトル・タウン」創刊。出版・印刷業やエッセイストとして活動。著書に「面白かんべェ上州弁」などがある。

エンゴジ解散


◎有権者にも悩ましい夏

 今月九日の各新聞のトップ記事には、「郵政」否決、衆議院解散の文字が躍った。郵政民営化法案が参議院で否決されたら、衆議院を解散し、民営化の賛否を国民に問う、というのが小泉首相の言い分であったから、その通りになったわけであり、これまでの首相の政治手法から見てみると“さもありなん”との気分も、ないことはない。

 YKK(山崎、加藤、小泉三氏による盟友関係)時代から首相の持論は郵政民営化だった。その意味では初志を貫くべく今回の解散になるわけで、首尾は一貫している。ワンフレーズ・ポリティクスと言われる首相の面目躍如といったところだ。分かりやすいといえば、それはその通りだし、政治にあまり関心のない人々には受けが良いかもしれない。

 一方、反対派の人たちの意見は、民営化に反対ではないが、早急に決めるのは良くない、もっと議論を尽くしてソフトランディングさせるべき、というのが多数派のようだ。年金や財政、税制改革、少子化対策など、やらなければならない重要課題を置き去りにして、郵政民営化問題のみにうつつを抜かしている場合ではない、との気持ちが、底にあるからなのだろう。このように反対派の立場も分からないではなかった。

 以上が日々、マスコミから流れてくる永田町夏の陣の悩める姿であった。

 それに対して、四十七都道府県議会の対応は一様に郵政民営化反対か、慎重審議の意見書を提出している。

 口角泡を飛ばす勢いで解散を宣言した首相は、これは「郵政解散」だ、とぶちあげた。これに対して、民主党・岡田代表は「日本刷新解散」だとした。

 ネーミング時代を反映してなのか、今度の解散に対してのネーミングがいろいろあって、考えさせられる。

 YKKの一翼を担っていた加藤紘一さんは「意味不明解散」であり、反対票を投じた自見庄三郎・元郵政相は「自爆解散」だと批判した。

 参考までにさまざまな識者から新聞に寄せられた○○解散の、○○に入る言葉を列挙してみると、次のようになる。

 リセット、意固地、あだ討ち、呪じゅ縛ばく、ポスト、独裁者、ひからびたチーズ、にわか、驚き、八つ当たり、わがまま―などなど。これらは確かにマスコミ受けするネーミングには違いない。

 そこには今回の解散に対しての批判的気分が色濃く流れている。大統領的首相独裁の悲喜劇性が透けて見えてくるのである。

 上州弁で言うなら「エンゴジ(意地っ張り)解散」とでもなるのだろうか。

 郵政問題に対してエンゴジであることが、明るい未来につながるのか、と問われれば、「ナンナンダガナなァ」とつぶやいてみるしか仕方がない。裁定を丸投げされた有権者にとっても“悩ましい夏”になりそうである。

(上毛新聞 2005年8月17日掲載)