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◎自然と共に暮らしたい 「夏が来れば 思い出す はるかな尾瀬 とおい空…」。先日、「夏の思い出」の歌で名高い尾瀬に行った。 ブナやミズナラの森林を抜けると、湿原に出る。森林に囲まれた尾瀬ケ原には、ニッコウキスゲが咲き乱れ、アヤメやカキツバタ、かれんなサワランなど、さまざまな花が迎えてくれた。あちこちに大小さまざまな池があって、ハスの仲間ヒツジグサやオゼコウホネがつつましげに花を咲かせ、湿原のかなたには山々を背景に白樺が点在して、緑の葉にほっそりした白い幹が鮮やか。 静かで明るい湿原を歩き、そよかぜの心地よさ、鳥のさえずり、川のせせらぎを楽しみ、五感をフル回転させて自然を満喫した。 尾瀬は湿原、山岳、池、沼、原生林などが変化に富み、国の特別天然記念物に指定されている。ツキノワグマやカモシカ、オコジョなどが生息する豊かな自然環境にはオゼヌマアザミ、オゼイトトンボなど尾瀬の名をもらった生物が千種を超える。 この尾瀬の自然環境を守るために、県をはじめ関係者は長年、さまざまな活動をしてきた。とりわけ、尾瀬の大地主である東京電力は木道を敷き、浄化槽完備の公衆トイレを設け、ブナの植林やごみ持ち帰り運動など自然保護に強力に取り組み、最近では水利権放棄もしたとのこと。こういった関係者のおかげで、私たちは尾瀬の自然を楽しむことができる。感謝しないではいられない。 今月十八日には、尾瀬戸倉スキー場で「夏の思い出」音楽祭がある。片品村やNHK前橋放送局など関係者が協力して、ボニージャックス、石井好子らが出演し、入場無料で尾瀬の素晴らしさと環境保全の大切さを全国に発信する。 ブナ等森林がなければ、雨水は土を削り、洪水となって、海まで荒れてしまう。自然環境を守ることが、命をはぐくむ水を確保し、大気を浄化し、土をつくっている。 それなのに、私たちは、シャワーや水洗トイレで大量の水を消費し、わずかな距離でも車で移動し、冷暖房で快適さを追い求め、環境に負担をかける生活をしている。 私はいま、尾瀬行きをきっかけに、水を飲んでは尾瀬の恵みに感謝し、水洗トイレの水を流しては「もったいない」と思う。もっと、自分の足で歩こう。来年はアサガオを育てて、クーラーを控えめにしたいな、植林を手伝えないかしら―などと夢をふくらませている。 尾瀬の恵み・自然の恵みを受け、自然と自然を守ってきた人たちに感謝し、自然と共に生きる生活をしたいと願っている。 (上毛新聞 2005年8月9日掲載) |