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上野村森林組合参事 黒沢 一敏さん(上野村楢原)

【略歴】万場高卒。シイタケ栽培など農業経営に取り組んだ後、高崎市内の生協職員となり店長に。01年から上野村森林組合に移り、総務課長を経て、現職。

低迷する木材産業


◎ブランド化が使命課題

 県林業試験場で花粉の飛ばないスギの苗木が開発されたと報道された。一昔前だったら画期的な研究成果で評価されたであろうが、木材価格が暴落し、広大な林野が荒廃、木材の皆伐が困難な情勢の中で開発された苗木の植林が進むとは考え難く、皮肉なものである。植林を進めるためには、まず木材を伐採できる一つの流れが必要になってくるのだが、いまだ決定打はなく、林業関係者にとっては深刻な問題となっているのだ。

 本県は素材生産地であるにもかかわらず、製材品については製品精度、品質の悪さ、価格が高いなどの理由で敬遠され、大手ホームセンターや製品市場で取り扱われる量は極めて少なく、他県で生産された製品を取り扱っているのが実情である。

 木材先進地では製材品の品質向上を目指し、木材乾燥機の導入が積極的に進められた経緯がある。建築に狂いの少ない人口乾燥材(KD材)である。

 本県ではKD材に対する認識が薄く、多くの製材所は木材乾燥機を持たない所が多く、生材(グリーン材)を出荷していた現状もあって、木材先進地に大きく遅れをとってしまったのである。

 高品質の木材を生産し、群馬優良木材としてブランド化することが使命課題である。本県では木材の品質を高めるため一定の品質基準を設け、クリアした製品を「ぐんま優良木材」として認証し、新築住宅着工者を対象に杉百本無償支援制度や利子補給制度を設けるなど、積極的に利用推進を進めている。

 しかしながら、その展開はいまだ補助事業のみの利用にとどまり、一般消費者が県産木材を使用してほしいと要望しない限り、販売店が率先して取り扱うケースは極めてまれである。

 県産木材を一般の消費者に利用していただくため、わが森林組合ではいち早く木材乾燥機の導入を図り、KD高品質材(十石材)を生産してブランド化に取り組み、独自で消費拡大に努めてきた。

 前橋の立見建設と業務提携し、産直モデル住宅に十石材を70%以上使用する条件で、TBSハウジング伊勢展示場に「ウッデイの家」を昨年春オープンさせた。住宅の評価は狂わない、精度が高い、価格も安い―と各方面から評価が高まっている。県産材もブランド化できたことにより、販路に道筋が開けた一例である。

 本県では県産材の利用推進をさらに発展させるため、鬼石町に県内初の木材加工コンビナートの建設を進めている。多くの関係者や関係団体は、低迷する木材産業の救世主として建設に期待していることである。

(上毛新聞 2005年7月19日掲載)