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◎望まれる管理法の整備 日本が野生動物の輸入大国であることは世界的に知られ、一九九六年には生きた鳥類、クマ類、リクガメなどの取引量が世界一位となった。そして、驚くほど多様な外来種が生態系への影響を全く考慮されないまま大量に導入され、しかも野生化を防ぐ管理がおろそかにされて、その多くが定着して生態系に悪影響を及ぼす侵略的外来種となっている。これに対応した管理対策は、いまだにごく一部の種にしか行われていないのが現状である。 このような状況を見る限り、現在の日本は外来種問題に関して極めて無防備で、無法地帯に近いといえる。日本における実体としては、中国産ソウギョが導入された野尻湖や木崎湖の水草の絶滅、マングース、ノネコ、ブラックバス、ブルーギルが絶滅危惧(きぐ)種を含むさまざまな動物や昆虫を捕食して局所的な絶滅をもたらし、捕食者のいなかった島嶼(とうしょ)などでは、大量絶滅が起こる可能性もある。 外来種が人の健康に及ぼす影響として、外来種が持ち込む新規の病原体による病気がある。各地で野生化したアライグマは、人に失明や死亡の危険をもたらす人畜共通感染症のアライグマ回虫症や狂犬病を媒介する可能性もあり、植物では外来牧草やオオブタクサなどが大量の花粉を分散させ、花粉症の原因となる。カミツキガメは気が荒く、いずれ巨体となって咬(か)まれれば指を食いちぎられる危険がある。 このような状況を背景に、環境省では二〇〇〇年から自然環境局に「野生生物保護対策検討会移入種問題分科会(移入種検討会)」を置き、対応方針の策定に向けた検討を行っている。定着後の対応例としては、奄美大島でのマングース対策が同年より本格的に開始した。北海道ではアライグマによる農作物等の被害が急増。九七年度に続き、九八年から被害防止と生物多様性保全の観点から、野生化個体の根絶を目標とする取り組みを開始した。 外来種の侵入を認めた場合、撲滅、封じ込めと制御などの策を施行するが、基本的に重要なのは飼育者の義務である。飼育されていた動物が侵略的外来種となる原因は、多くの場合、飼育中の逸走か飼育者による遺棄である。これを防止するためには、飼育者に一定の義務を課す必要があり、飼育動物が野生化し、その対策が必要となった際には当然、飼育者の責任が問われるべきで、飼育者を特定して責任を追及するためにも、個体登録制度は欠かせない。 現状を踏まえた対策は、外来種管理法の整備が望まれ、次のような内容が検討されることが望ましい。(1)外来種の輸入に関しては、輸入は必ず国の許可を必要とする(2)導入種が生物多様性に与える影響を評価した上で国の機関に利用申請する(3)影響が軽微と判断される場合を除き、導入・輸入は原則禁止―などである。これらは生物多様性条約の指針原則、国際自然保護連合の作成したガイドラインをベースに整備する必要がある。 (上毛新聞 2005年7月10日掲載) |