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県立女子大学教授 片桐 庸夫さん(新町)

【略歴】慶応大大学院法学研究科博士課程修了。法学博士。専攻は国際関係論、外交史、政治学。著書『太平洋問題調査会の研究』で04年度吉田茂賞受賞。

新かかあ天下・群馬


◎新町男女共生社会の実現を

 「女子大生亡国論」に代わって「女子大生興国論」を慶応大学名誉教授の池井優氏が著し、反響を呼んでから久しい。池井氏の説を今日の女子学生が知っているかどうかは疑わしいが、彼女らが男子学生以上に元気で活発であるというのは、今や一種の社会現象であると言っても過言でない。

 それを示すかのように、法学部や経済学部等に在籍する女子学生数は増加し、国際関係学・地域研究・異文化交流等の専攻、留学願望、卒業後の就職希望等も男子学生に決して引けを取らない。卒業後に外資系企業・国際機関等への就職を切望する女子学生の割合も、男子学生を上回っているものと思われる。

 日本にはそういった流れがあるにもかかわらず、本年度の世界経済フォーラムによる男女平等ランク付けでは、五十八カ国中三十八番目である。先進国としては決して自慢にならない評価といえよう。さらに国や地方自治体の文化水準や見識を示す男女共同参画の昨今の進ちょく状況に関しては、停滞気味に見える。

 周知のように、男女共同参画とは(1)男女の人権の尊重(2)男女の性差に基づく社会制度または慣行についての配慮(3)国、地方自治体、企業等の政策等の立案および決定への男女の共同参画(4)夫婦による家庭生活と社会活動両立に向けての協力(5)国際協調―以上、五点の考えに基づいている。

 本県でも、平成十三年に「ぐんま男女共同参画プラン」が策定され、昨年四月には右の五点に立脚した男女共同参画推進条例が制定されている。県庁内には人権男女共同参画課が設置され、共同参画を進めるために県の委員会委員の男女構成比、地域・職場において女性の声が反映されるための環境整備、子育て環境の整備等に向けた取り組みがなされている。

 しかし、昨年三月の調査から本県の取り組みの成果をみると、例えば県の審議会に占める女性比率は21・8%で、全国都道府県順位は下から数えて十五番目である(県は、本年度中の達成目標を33・3%に置いている)。これでは「かかあ天下・群馬」もいささか看板倒れとなってしまう。

 お年寄りによる孫の世話を期待できない核家族化が進む今日、県や県内市町村が結婚後も、あるいは出産後も働きたいとの意欲に満ちた女性の社会進出を積極的に支援することは、男女共同参画の実を上げ、女性の生きがいを高めることである。同時に、少子高齢化時代に労働力を確保する有力な方途でもある。

 県、市町村、企業等が協力し合って、他に先んじて女性をバックアップする社会的システムの構築と、職場や夫の理解を求める努力を積み重ねることによって、男女共生社会の実現を図りたいものである。その先には生き生きとした「新かかあ天下・群馬」が見えてくるように思われる。

(上毛新聞 2005年6月18日掲載)