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◎大事な子供たちの視線 その幼稚園に伺ったのは四月中旬のことで、桜の花が散り始めた葉桜のころでした。懐かしさのあまり、ちょっと寄って見ることにしたのですが、園庭を元気に飛び回る園児たちの中に園長先生を見つけたので「おはようございます、ごぶさたしております」とあいさつを交わし、園長の眞下春子先生は気さくに「本当に久しぶりですね。さあーどうぞ」と言って、門を開けてくださって、この話が始まったのです。 その前に、幼稚園の紹介と、私と園長先生との出会いからお話させていただきます。この幼稚園は、大泉町のみよし第二幼稚園です。百九十人余りの園児たちに豊かな自然の中で教育を行い、教育目標として《じょうぶなからだでみんななかよくがんばる子》を掲げ、四季折々の自然にふれることのできる園外保育なども実施されております。 また、「子育てセンター無料相談」と名付けて、日中、母子だけになって孤立しがちな家庭の育児を応援するために、ゼロ歳―三歳の未就園児のお母さんを対象に毎週、幼稚園を開放して園の雰囲気を楽しみながら親子の友達づくりの場として、また、子育ての情報交換の場として交流を図っているのです。子育ての悩みも、先生がいつも相談に乗ってくれるそうで、子育てセンターはとても喜ばれているそうです。 さて、私と園長先生の出会いですが、私は企業、行政、団体の環境保全活動支援の職をしている傍ら、幼稚園や小学校低学年を対象に二十五分程度のリサイクル紙芝居のボランティアをしており、前から豊かな自然を持つみよし第二幼稚園に伺って、お話をしたいと思っていたのです。 そこで、私から園長先生にリサイクル紙芝居のことで電話をしたのがきっかけで、初めてお会いする機会を得たのです。 さて、園長先生の話ですが、話が始まったのは園庭の桜の木の下で園児たちを見詰めながらのことでした。 江原さん、この桜はね、三十年前、父兄と子供たちが植えた桜なんですよ。当時は、記念にと考えていたんですが、今では大きくなり、園児一人では腕を回してもとどかないのよ。大きくなるのね…。 江原さん、しゃがんで桜を見て! この視線が園児たちの視線なの。低く伸びた枝は大人にとっては邪魔だけど、園児にとっては桜が身近に感じられる素晴らしい世界なのね。だから、枝を切らないのよ。 それから、むやみに園庭を大人の考えで作らないようにしているの。園児たちの中にいると、よく分かるけど、一人一人、お気に入りの場所を持っているのよ。すごーく楽しそうに遊んでいるのね。 だから、園児たちのお気に入りの場所をもっともっと作りたいので、江原さん、相談に乗ってくださいな。 園長先生は、楽しそうに話してくれました。私はこの話を聞いて思いました。あぁ、この幼稚園は自然とみんなの優しさと愛情に包まれた桃源郷なのだと。やっぱり自然の力って素晴らしいですね、これからも大切にしたいものです。 (上毛新聞 2005年6月4日掲載) |