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フラワービレッジ倉渕生産組合理事長 近藤 龍良さん(倉渕村水沼)

【略歴】愛知県出身。商社勤務の後、86年に家族で倉渕村に移住し農場を開設。フラワービレッジ倉渕生産組合理事長、NPO法人・日本園芸福祉普及協会専務理事。

ノーマライゼーション


◎欠かせない人材の育成

 「国際障害者年」(一九八一年)では「完全参加と平等」がスローガンとして採択されて、「ノーマライゼーション」の概念がわが国の障害者施策の中にも広まってきました。スウェーデンなど北欧での障害者に対する考え方や運動がモデルとなって進められているものですが、現実にはまだまだ厳しいようです。障害を持った人たちの才能や特性もなかなか活用できる受け皿や現場が見あたらないのが現状です。

 障害のある人たちの暮らしや教育問題、そして職業に従事することなど、問題は山積しています。特に就業を希望する場合、まさに厳しい条件の中にあります。景気も持ち直してきたとは言いますが、こと障害者雇用に至ってはまだまだ真冬の状態です。競争社会とか効率化など、経済的理由が障害のある人たちの職場や職業が狭められたり、なくなるということは、障害者年のスローガンにも反することに思われます。

 ノーマライゼーション社会とは経済的見地だけではなく、福祉社会の構築のためという大見地に立った流れが望まれます。北欧をはじめ福祉先進国にみられるように、平等な社会参加としての永続的な仕組みを学ぶべきだと思われます。

 わが国の福祉政策、特に障害者への対応についてはいろいろな検討がなされてはいますが、まだ施設の充実など集合集団的な運営などについてのみ顕著で、在宅を含めた自活型の障害のある人たちにとってはあまり行き届いていない気がしています。

 もちろん、障害のある人といっても、いろいろな障害種別や軽重度もあり一概に言えませんが、例えば知的障害のある人やまだ元気な高齢障害の方など身体的な労働就業に適する人や、身体が不自由でも知能技術を生かしたIT(情報技術)産業などへ就職を希望する人たちも多く、それらの人たちに就職情報やあっせんをする機能を進めてほしいと思います。

 ノーマライゼーションの思想は、障害のある人に同情して囲い込むということではなく、その人の才能や特性、そして夢や希望をかなえて共生していく社会づくりの理念だと思います。その達成にはそのハンディに対してサポートなどボランティア活動が必要となってきます。

 例えば、花づくりや農業に従事したい障害者の方があれば、その人ができるよう作業や設備の改善が必要になりますし、職業人としての教育や訓練、サポートが欠かせません。ノーマライゼーション社会をつくり出すためには、お金やハードだけでなくボランティアなど人材育成が欠かせない基本です。

 わが国でも、NPO法人日本園芸福祉普及協会認定の園芸福祉士資格者が園芸作業などの指導やサポーターとして活躍しています。本年度から本県でも四十数人の園芸福祉士が誕生して、これからの活躍が期待されています。本年度も資格取得のための講座が開催されますので、興味のある方は、事務局の社会福祉法人ほたか会介護研修センター(電話027・256・7605)まで照会ください。

(上毛新聞 2005年5月14日掲載)