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◎調理通して五感育てる ある日、五歳の息子が私に、「とうふはだいずでつくるんだよ」「きなこもそうだよね」と話してきた。「よく知ってるね。あの丸い豆から豆腐ができるんだ」と返すと、「そうだよ、ゆでてから牛乳みたいにして四角い箱に入れて作るんだよ」と得意そうに答えた。 息子たちの通う保育園では、給食の時間に食べ物に関する話をしてくれる。また、チャイルドクッキングといって、簡単なおやつなどを子供たちが作る時間が設けられている。クッキングのあった日はその様子を聞かせてくれ、「今度のお休みに作ってあげる」とうれしそうに話す。子供たちにとって、とても楽しみな時間の一つだ。 就学しても四角いコンニャクが木になると思っている子供や、食品の名前を知らない子供もいる。こうしたことは、親も子供も忙しく家庭で食に関した会話が少ない、身近に畑が減ってきているので実際に見られなくなっている、核家族が多くおばあちゃんの知恵袋的な話を聞く機会が少ない―ことなどが原因だと思う。 とにかく、食に関して簡単な知識もない子供が目立つ。そのため、幼稚園や保育園で食に関する指導をしてくださることは、とてもありがたい。学校でも折に触れ食の指導をしているが、好奇心が旺盛な幼児の時期に食に関する知識を刷り込んでいき、料理を体験させることはとても大切なことだと思う。 私が栄養士という仕事に携わっているせいか、息子たちは料理をすることに関心があるようだ。台所で音がすると「何か切りたい」とやって来る。危なっかしい手つきで野菜の皮をむいたり、切ったりしてくれる。特に子供用の包丁は用意していないので、普通の菜切り包丁を使わせている。包丁は指も切れ、切ったら痛みを感じる。 そこで、どうしたら安全に使えるかを考え、材料の向きを変えたり、持ち方を変えたりと子供なりの工夫を始める。結構、ハラハラしたりイライラしたりするけど、やりたいと思う気持ちを大切にしてあげたいと思い、黙ってやらせている。三歳の息子もお兄ちゃんに負けまいと踏み台に乗って頑張っている。材料を切り終わると、包丁を立ててザァーとまな板から野菜を滑らせてボールに入れるしぐさには驚かされた。 幼児のうちは、料理を作るというより工作の延長のようなもの。材料を切ったときの音や手に伝わる感覚、触った時の感触、素材のにおいや色、形を確かめるなど調理を通して五感を育てていくことだと思う。また一緒に台所に立つことで、食べ物の話や一日の出来事など親子の会話も弾む。 大人がやってしまった方が時間もかからず、キッチンも汚れないが、そこをぐっと我慢して待つゆとりを持ってほしい。子供たちをもっともっと食事作りに参加させ、食に興味を持たせてほしい。 (上毛新聞 2005年5月8日掲載) |