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◎帰国後の認知が不十分 皆さん、青年海外協力隊をご存じでしょうか。二十歳から四十歳までの男女ボランティアが二年間、アジアやアフリカなどの途上国で自分の特技を生かして赴任国の国づくりに協力する日本のODA(政府開発援助)事業の一つです。農業や教育など百六十を超える職種で、世界六十カ国を超える国に隊員が派遣されています。協力隊員はそれぞれ、赴任国の一般国民と同じ生活レベルの中でさまざまな経験を積みながら活動しています。 実は、私の三人の娘のうち二人が協力隊員として途上国での協力活動にかかわっています。まず、二女が平成九年にマレーシアに赴任し、子供たちに水泳を教えてきました。その後、同国の障害者スポーツの普及・技術向上プロジェクトにかかわり、昨年三人の選手を引率してアテネパラリンピックに参加しました。また、三女は十五年にカンボジアに赴任し、現在も世界遺産で有名なアンコールワット近くの幼稚園で教員として活動しています。 人には誰でも青春の思い出があると思います。もちろん私にもあります。昭和三十五年、アメリカ合衆国に若きケネディ大統領が誕生しました。当時、彼は「青年よ、国家に何かを求めるのではなく、国家のために何ができるかを考えよ」と言って、青年のために途上国でボランティア活動するPEACE CORPS(平和部隊)を創設しました。青年海外協力隊は、この平和部隊をもとに創(つく)られたものです。私は学生時代、のちに協力隊第一期生となった友人M君と、「日本版平和部隊を作ろう」と、よく夢を語り合ったものです。 敗戦から六十年、日本は物質的な豊かさでは世界でも有数な国家になりました。しかし、そのほかの例えば心の豊かさなどは、逆にどこかに行ってしまったような気がします。特に他人への思いやりを忘れ、自己中心的な青年が増えてきているということは非常に憂えなければならないことです。 最近、自衛隊の海外派遣を視野に入れた憲法論議が盛んですが、私はその前に平和な世界をつくるためにもっと知恵を出すべきだと思います。緊急時の国際協力は当然のこととして、日本が本当に人類の恒久平和を望むのであれば、平時における国際協力にこそ力を注ぐべきでしょう。 その一つとして、青年海外協力隊の存在と実績を、すべての国民に、特に青年たちにもっと知ってもらいたいと思います。青年海外協力隊は派遣先の各国で大変感謝されているようですが、帰国後の就職など自国内ではまだまだ認知が不十分です。日本はこういう貴重な経験を積んだ人材をもっと大切にし、生かすべきだと思います。 私は日本の青年が、青年海外協力隊に参加することを勧めます。恵まれた環境の中で育った彼らが途上国の国づくりに参加し、経験を積むことは必ずや心の糧になると思うからです。しかも外から日本を見ることで、あらためて「日本」を考えることができるのです。 (上毛新聞 2005年5月7日掲載) |