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群馬ホスピスケア研究会代表 土屋 徳昭さん(高崎市中居町)

【略歴】小諸市出身、群馬大工学部卒。県内高校に28年間勤務、現在伊勢崎工業高非常勤講師。88年の群馬ホスピスケア研究会の設立に参加し、以後代表を務める。

緩和ケア病床


◎計画の早期実現を望む

 県では、県民のニーズに即した保健医療施策の積極的展開を図るため、平成十二年に「保健医療計画」を策定、それに基づいてさまざまな取り組みをしている。具体的には、県立病院において高度専門医療機能の充実とセンター機能の強化、県立がんセンターではがん専門病院としての機能拡充に向けた病院の増改築が進行中だという。

 保健医療計画の趣旨にのっとり、県では平成十三年度に「県緩和ケアの在り方に関する検討会」を組織。会長に県衛生環境研究所長の小沢邦寿氏、委員には医師五人、看護師二人、行政代表として県立病院から二人、保健師一人、有識者として三人が委員に委嘱された。私も市民活動の代表として三人のうちの一人として意見を述べさせてもらった。

 一年間にわたり、六回の検討会と一回の先進地視察が行われた。先進地視察は、地域医療で有名な諏訪中央病院が選ばれた。

 検討の結果は、十四年度末に「報告書」としてまとめられたので、詳細は県の医務課に問い合わせると、閲覧ができると思う。

 報告は本県の緩和ケア病床の必要数について、県内を中毛、西毛、北毛、東毛の四ブロックに分け、それぞれの人口比から二十八床、二十八床、十七床、二十七床の計百床と算定している。この算定の基準はいささか複雑なのだが、おおむね次のようである。

 県内のがんによる年間死亡者数は四千六百人、英国と同等の20%を緩和ケア病床がカバーすると九百二十人(A)、必要病床算定率として年間日数×平均病床利用率÷平均在院日数=五・七四人/床(B)とし、A÷Bを現在必要な病床推計数とし約百六十床を推計した。これらを基に、将来必要な病床推計数として百六十×(50―70%)を計算し、およそ百床としたものである。この50―70%の補正率は平均在院日数の減少と、英国との文化の違いによるとしている。

 百床でも百六十床でも構わないが、この報告書が出された時点では、県内二百床以上の病院に緩和ケア病床建設に手を挙げる医療機関はなかった。理由は建設コストと運営コスト、つまり、作っても採算がとれるかどうかの問題だった。中小病院への緩和ケア病床整備への補助制度の必要性も検討課題だとするが、具体的な動きはなかった。

 ところが本年三月、富岡総合病院に十四床の緩和ケア病棟が完成し、見学会があると知らされて行ってみた。素晴らしい病棟だった。緩和ケア病棟は、その地域の医療水準のバロメーターだと思う。全県的に計画が早期に実現できるよう期待したい。

(上毛新聞 2005年4月30日掲載)