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日本政策投資銀行理事 深谷 憲一さん(東京都世田谷区)

【略歴】前橋市生まれ。前橋高、京都大法学部卒。71年に運輸省入省。同省航空局長、海上保安庁長官などを経て退官。現在、日本政策投資銀行理事。

日本の国境


◎海洋権益を守る努力を

 国連海洋法条約によれば、沿岸から二〇〇カイリ(約三百七十キロ)までは沿岸国の排他的経済水域とされ、沿岸国に漁業資源利用等の経済的主権が認められている。また、同条約により、その海底は沿岸国の大陸棚とされ、海底(地中も含む)の鉱物・生物資源の開発利用の主権が沿岸国に認められる。

 同条約ではさらに、二〇〇カイリの外側であっても、三五〇カイリまでは、海底の地形、地質が継続した大陸性を有していればその沿岸国の大陸棚として認められることとなっている。ただ、そのためには、地形、地質についての実証データをもって、二〇〇九年五月までに国連に申請のうえ認められる必要がある。

 海上保安庁ではこれまで海図を作って、海の水深や海底の地形、海底火山の状況など、保有する調査船を使って長年調査をしてきた。同庁ではこの調査の一環として、わが国の二〇〇カイリの外側についても、海洋法条約に従って拡張の可能性があるかどうかを調査。その概要調査の結果、日本の国土の約一・七倍にあたる広さの海域がわが国の大陸棚として拡張できる可能性のあることが分かった。

 一方、ロシアが世界で初めて海洋法条約に基づいて大陸棚拡張申請を行い、その結果が注目されていたが、データ不足のため申請が却下されてしまった。この事実がはっきりしたのが〇三年春。国連の審査ハードルは極めて高く、これまで考えられてきたのと比較して、より詳細な調査が求められることがはっきりしたのである。

 無論、わが国においても〇九年の申請期限に向け、海上保安庁、資源エネルギー庁、文部科学省が分担・協力しながら調査を進めているが、より詳細な調査データが必要になったのである。政府は〇三年十二月、ようやく内閣に「大陸棚調査対策室」を設置し、〇四年度予算で政府全体として対前年度比約600%増の百四億円の調査費を計上し、本格的な調査に乗り出した。

 今次(第百六十二回)国会の総理施政方針演説でも「海洋国家として、大陸棚を確定するための調査や周辺の海底資源を探査する船舶の建造など、海洋権益の保全に努めてまいります」とふれられた。政府としては、十分な予算を確保し、調査に万全を期し、わが国の海洋権益を守る努力をしてもらいたい。これまで、われわれは日常生活の中で普段目にすることの少ない海洋をめぐる問題について無関心でありすぎたのではないか。

 最近話題になっている尖閣、竹島の問題、東シナ海の天然ガス開発問題、沖ノ鳥島をめぐる問題など、これまで長い間あまりに無関心でありすぎた。わが国の国境は海にあり、また資源は海洋にも眠っている。普段目にすることが少ない分、一層、海洋に高い継続的関心を持っていたいものである。

(上毛新聞 2005年4月26日掲載)