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群馬大学社会情報学部教授 黒須 俊夫さん(前橋市天川大島町)

【略歴】栃木県真岡市生まれ。宇都宮大卒後、東北大大学院教育学研究科に進学。教育学博士。宮城教育大助手、群馬大教養部助教授を経て、93年から現職。

個人情報保護法の施行


◎自らの取り扱い慎重に

 今月一日から「個人情報保護法」が施行された。この法律はこれまで明確でなかった個人に関する情報の取り扱い原則を規定したもので、いくつかの問題点をはらみながらも積極的に推進すべき点もあるので、この法律について考えてみたい。

 もとより私は法律家でもなく弁護士でもないので、より正確な情報については「個人情報の保護に関する法律」そのものを参照していただきたいし、問題や疑問が生じたときには、専門家や相談機関(県民相談センター情報公開グループ)等にご相談いただきたい。

 「個人情報保護法」の主な内容は次のようである。

 (1)個人情報取扱事業者(以下、事業者)は、個人情報を収集するときには利用目的を明示しなければならない(2)目的以外で利用する場合には、本人の同意を得ないといけない(3)本人の同意なしに第三者に情報を提供してはならない(4)本人からの求めがあれば、当該個人の情報を開示しなければならない(5)その情報が事実ではないときには、訂正や削除に応じなければならない(6)事業者がこの法令に違反した場合には、六月以下の懲役または三十万円以下の罰金が科されることがある(7)次に挙げる五つの事業者・団体が本来の目的を達成するための活動には、前述の義務は除外される。報道機関の活動、著述業者の活動、学術研究の活動、宗教活動、政治活動。

 この法律のメリットは、これまでになかった個人に関する情報の取り扱いルールを規定したこと、この法律によって一人一人が自己の情報の扱われ方についてコントロールすることが可能となったこと、等である。問題点としては「個人情報取扱事業者」は過去六カ月間に毎月五千人以上の個人情報を扱っていた業者とされているが、そのことを精査する方法が規定されていないことである。

 さらに、より重要な問題点は、この法案に対して衆参の両院で採択された「付帯決議」の中の「主務大臣の権限の行使にあたっては、表現の自由、学問の自由、信教の自由及び政治活動の自由を妨げてはならない」というこの法律の規定の趣旨を徹底することが十分に尊重されうるか、ということである。

 とはいえ、この法律によって、私たちは自己に関する情報をコントロールすることが、少し前進したのである。しかし同時に、このように法律が整備されればされるほど「個人情報」の「価値」が高くならざるを得なくなり、ますます個人情報の「のぞき・盗み・強奪」といった犯罪行為が暗躍することは想像に難くない。

 だとすると、私たちはこの「個人情報保護法」の施行を機に、今まで以上に自らが自らの情報の取り扱いを慎重にしなければならなくなったのである。むやみにカードを作ったりせずに、できるだけ個人情報を発信しないこと、自宅の郵便受けに鍵をかけたりして日常生活における個人情報の盗難や漏えい対策をしっかりと立てておく必要があろう。

(上毛新聞 2005年4月22日掲載)