視点 オピニオン21 |
■raijinトップ ■上毛新聞ニュース |
|
|
◎教育の大切さ伝えたい かつて、移民としてブラジルに渡った日本人たちは皆、子供たちの教育に熱心に取り組み、子供たちのために勉強の場を作り、ブラジル人からは「GARANTIDO(間違いない、信用できる)」と呼ばれるほどになりました。それほどまでの信用を得た源は、子供たちの教育に熱心であったからだと思います。 移民としてブラジルという未知の土地へ渡り、いかにしてこの土地で生きていくかということを思考錯誤しながら、やはり子供たちの教育が一番大事であることに気付いたからだと思います。生きることに精いっぱいだった中で、子供の教育には惜しみなく、そして限りなく力を注いだ親たちが大勢いました。 一九八九年ごろより、ブラジルから日本人の子孫「日系人」たちが出稼ぎとしてやって来て、今や定住化が進んでいます。 しかし、かつて日本からブラジルに移住していった人たちのような教育に対し、情熱をもった人たちが果たしてどのくらいいるのでしょう。当学園でも、最近は両親が仕事に出、休日でも七時から二十時までブラジル学校や託児所に子供を預け、遊びに行ってしまう若い親や、お金だけを与え、しつけのできない親が増えています。そして、何か問題があると、すべて学校の責任にしてしまう。これは日系人だけでなく、日本の学校でも増えている現象だといわれていますが…。 子供の意思を尊重しているかのように、「きょう学校に行きたい? それとも休みたい?」などと気を使う学園の親たち、自分の思い通りにいかないと暴言をはき、なおかつ親に手を上げる子供もいます。それに対し、たしなめることもせず、仕事、仕事で時間がないため子供に対し負い目をもっているのか、しつけの部分が欠如したまま甘やかしてしまい、結果的に子供たちはやっていいこと、悪いことの区別も見失っているように感じます。 思春期を迎えた子供たちは親に対し聞く耳を持たず、また、親もそんな子供を見放してしまうため、居場所を失っている子供たちが増えています。親に対する信頼を失った子供たちは、自分で日本社会を生きて行かなければなりません。そのときになって初めて、いかに日本の言語や習慣、ルールが大切だったのかと気付くようですが、その時点からやり直すことは大変困難なことだと思います。 そんな子供たちを見ているため、日伯学園では幼児クラスから毎日、日本語授業の中で、言語及び習慣、課外授業を通して社会とのかかわりを教えることに取り組んでいます。少しずつですが、幼児クラスの子供たちは日本の習慣などもある程度年齢のいった子供たちよりも容易に受け入れることができつつあります。 その様子を見ていて、やはり早期教育、幼児教育の重要性というものを肌で感じ、さらにその子供たちを通して親に教育の大切さを伝えていけるのではないか、と考えています。 (上毛新聞 2005年4月4日掲載) |