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◎すべてが学べる機会を 上毛新聞社主催で毎年開催される「上毛書道三十人展」が、本年も先月十八日から六日間、高崎シティギャラリーで開催された。 この書展は、漢字・かな・墨象・少字数および近代詩文・刻字の五部門の県内書家、三十人を選抜して開催される書道展である。私も出品させていただいたが、県内外からたくさんの方々が会場を訪れ、にぎわった。 開催にあたって小寺弘之知事は「書道は日本の文化や伝統の源であり、書き手の心が映し出される精神性の豊かな芸術です。この展覧会の優れた作品は、ご来場の皆さまに書道の深遠さや美しさ、表現力を伝え、深い感動を与える…」と祝辞を寄せられた。 また、「三十人展」開催の祝賀会で、元文部大臣の中曽根弘文氏は、最近の子供たちのことや教育現場をめぐる事件の異常さを憂えた上で、日本の伝統文化の一翼を担う書道の持つ優れた人間形成の効用を述べ、ゆとり教育を推進した最高責任者としての信条を語られた。 「三十人展」が開かれた会場の隣室では、高崎工業高三年生の書作品「高工書道展」が開催されていた。卒業を控えた生徒たちが、「自分の言葉で自分を書く」ことを共通のテーマに書き上げた作品で、生徒たちのそれぞれが自分を見つめ、素直な気持ちでつづられた言葉の一つ一つが生徒なりに工夫され、墨書されていた。 校長先生が「『自分の言葉で自分を書く』という作業は、自分以上でも自分以下でもない、いわば等身大の自分そのものをさらけ出すことであり、自分の内面をしっかりとみつめ自問しなければできることではありません。そして、それを文字に表すことは大変勇気のいることではないかと思います。この会場には、そんな勇気ある生徒、職員の分身たちが展示されています」と書かれているように、その作品は鑑賞する人の心を強く打った。 高崎工業高三年生、八クラス三百七人は、週二時間の書道を学んで、卒業を控えて自己の信条を自分の言葉で見事に書き上げて、この書道展を成功させていた。 この書展に参加した生徒たちにとっては、たくさんの人々に鑑賞してもらうことで、まさにこれからの自己の生き方をしっかりと見つめ、たくさんの人々に自己の目標を公表している。この姿を実現できたのは、高校教育のなかに書道教育をしっかりと位置付け、校長をはじめ職員の方々が強力にバックアップして実現できたことだ。 それにしても、現在の県下の公立高校の実態を見ると、専任の書道教諭のいる高校は六校、掛け持ちの併任と講師を含めて書道の授業が実施されているのは、わずか二十校ほどに過ぎない。県立高校六十八校、市立高校六校を含めても、書道を選択し、学ぶことのできない圧倒的な高校生の現状に、どこの高校生にも書道が選択でき、書道を学ぶ機会の持てることを期待してやまない。 (上毛新聞 2005年3月23日掲載) |