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◎まずは“芽”を育てない 人間にはDNA(デオキシリボ核酸)を修復する機能があり、また小さいうちなら、がん化が起こっても、がん細胞を排除する能力もあります。実際には、がん細胞がブレーキがきかない状態でどんどん分裂・増殖して、がん腫(しゅ)になります。最初は一〇ミクロン(〇・〇一ミリ)ほどだったがん細胞が一センチぐらいになるのに十年から二十年かかるとされます。今回は、がんができてもその増殖・発育を抑えて、がんで死なないようにする方法を紹介します。 発がんイニシエーションに引き続き、遺伝子変異を受けて発がんプロモーションが起こります。この段階での予防、すなわち「がんの芽は出ているが、この芽を育てない」方法があります。例えば、「緑茶」に含まれている茶カテキンという物質が発がんのプロモーションを抑制するという研究成果が報告されています。 緑茶は発がんイニシエーション自体を抑制しませんが、緑茶の多飲者はがんの発生が遅れるとされます。この緑茶以外でも、赤ワインのポリフェノールやミカンに含まれる色素(βクリプトキサンチン)が発がんを抑制するという動物実験の報告があります。 食事関連で予防効果が認められるものとして、ビタミンA、ビタミンC、βカロチンなど(果物、野菜に含まれる)が指摘されています。ビタミンCにはニトロソアミンなどの化学物質による発がんを防止する作用があります。ビタミンC、E、βカロチンはフリーラジカルを消去することにより、発がんを抑制していると考えられています。ビタミンCの摂取量が少ない地域では、二―三倍の胃がん発生が認められると報告されています。 また、たばこを一日二十本以上吸う人の血漿(けっしょう)中のビタミンC濃度は吸わない人より40%も低いとされ、たばこを吸う人はビタミンCを多くとる必要があります。 βカロチンは脂溶性でプロビタミンA(ビタミンAの前駆物質)といわれ、人の体内で酸化・還元されてビタミンA(レチノール)となります。このβカロチンは紫外線障害の予防と、がんの予防効果を持っています。ビタミンEは細胞膜の比較的表面に存在して抗酸化作用を発揮しているのに対し、βカロチンは細胞膜の深部にあって、主に細胞膜内で発生したフリーラジカルを消去して発がんのプロモーションを抑制していると考えられています。 一日にβカロチンを四ミリグラム以上摂取している人では肺がんの発生率が0・5%程度で、βカロチン摂取量が少ない人は多い人の七倍もの確率で肺がんが発生したと報告されています。βカロチンとがん発生に関係があるとする報告は肺がん、子宮頚(けい)がん、食道がん、頭頚部がん、胃がん、前立腺(ぜんりつせん)がんなどです。 (上毛新聞 2005年3月5日掲載) |