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◎もっと生きた援助を 今、世界の発展途上国でさまざまな援助が行われています。大きなものでは国家間のODA(政府開発援助)からNGO(非政府組織)の団体、さらに個人のボランティアグループまで幅広く活動しております。 私がよく行くネパールも貧しい国の一つですから、道路建設、ダム、植林のほか、いろいろな分野で援助活動が行われています。豊かな国から発展途上国への援助は必要なことですが、中には首をかしげたくなるものも少なくありません。 例えば、ネパールでも植林の援助が行われています。海外から集まった貴重な資金は、都市での経費で多くが消えてしまいます。知り合いがサガルマータ国立公園内で木を育て、植林をしていますが、支給される給与はごくわずか。とても一家を養える金額ではなく、アルバイトをして生活しています。事業は長く継続しなければ意味がなく、そのためには末端の人が安心して暮らせるものが必要です。 また、日本人が好きな支援の一つに学校建設があります。校舎が古いといって建て替えたり、学校が遠いので近くに建てたりとか、とにかく箱物が好きです。でも、今必要なのは器でなく中身です。教員の増員と待遇改善という援助があれば、山奥にも多くの者が派遣され、質の高い教育が受けられます。人材が育つことにより、将来国が変わる大きな要因ともなります。 昔、石板やろう石を使っていたころとは違い、今ではノートや鉛筆なども安く手に入ります。学校もなくて行けないのではなく、家が貧しくて行けないことが多いのです。 二十年前のことですが、私たちも日本からの三十億円の無償援助の仕事にかかわったことがありました。仕事の内容は、ネパール全域に電話を整備するプロジェクトでした。電話のことなどまったく分からなかった私たちですが、普段、登山する際に何百人ものポーターを使って荷物を運んでいたので、この国では人力で物を運ぶ運送業の専門家でした。インドから送られてきた資材を何日かかけて各地のサイトに運ぶのです。 電気のない村に突然電柱が立ち、電話局ができるのです。しかも、莫ばく大だいな費用と労力をかけて造られた局には、わずか三回線が開通するのみ。そのうちの二回線は軍隊と警察が取り、民間は公衆電話として一回線が割り当てられるのみです。 ポカラという町の電話局長と、このプロジェクトについて話し合ったことがありました。局長は「この援助は、地元にはメリットがない。メンテナンス期間は一年と短く、もし故障したときに部品が入らなければ、すべてが無駄になってしまう」と嘆いていました。さらに「実情を知らない中央の役人が決めている」とも。発展途上国では援助を受ける回数が多くなると、すべてを援助に頼ってしまう。もっと生きた援助が必要ではないでしょうか。 (上毛新聞 2005年3月3日掲載) |