視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
尾島町ボランティア推進課・生涯学習課長 赤石 みち子さん(太田市脇屋町)

【略歴】66年尾島町役場に入職し会計課長、県内初のボランティア推進室長(02年に課に名称変更)などを経て03年11月から現職。複数の市民活動に参画。

「災」への対応


◎転じて「福」となしたい

 昨年の世相を反映する漢字は「災」であった。次々に襲いかかった自然災害の脅威は、未曽有のものとなって被災地はむろん世の人々を恐怖におののかせた。被災地の復興に加え、被災者の精神的外傷はいつまで続くか計り知れないだろう。慰めの言葉も見つからず、被災者の皆さんに一日も早く笑顔が戻ってほしいと祈っている。

 昨年七月に起こった新潟県の豪雨災害では、災害ボランティア組織がなかった当町でも、町ボランティアセンターを通して六人のボランティアが復興支援に協力を申し入れてきた。六人は二日に分かれ、三条市でボランティアに当たってくれた。その後も、別のグループから「行かせてほしい」とボランティアの申し出があったが、残念ながら被災地との受け入れ調整で行くことができなかった。

 この豪雨災害を契機に、災害ボランティア組織の重要性を痛感させられた。私はボランティアに行けなかった彼らに「尾島町でも地域はもちろん、県内外の災害にも迅速に対応できる態勢をつくっていこう」と問いかけた。実は、彼らも同じことを考えていた。「災害は待ってくれない」と、彼らは素早く行動した。災害ボランティア「地域ネットお陰(かげ)さまで」を立ち上げ、翌日から会員募集を始めた。現在は、十五歳から七十六歳まで、さまざまなノウハウを持った六十六人の会員が情報交換を行い、研修を重ねている。

 彼らは昨年十月二十三日の新潟県中越地震災害の際にも、素早く反応した。災害が起きた翌日には義援金の募金活動に奔走、現地の復興支援にも出向いた。とにかく対応が速い。「今、必要なことは」と思ったときには、もう行動している。現在は、昨年暮れから手掛けている会員手作りの「尾島地区避難所マップ」を町内の全世帯に配布するための作業を行っている。

 「災」は自然災害だけでない。子供や地域を災難から守ろうと、昨年四月には子育て支援ボランティア「おじまエンゼル隊」が設立された。現在、二十代から八十代までの三百人からの会員が「おじまエンゼル隊」の黄色いゼッケンを付け、子供たちの安全を主体に活動している。

 「災」は、事故や病気でも突然襲いかかる。突然の中途失聴者や、病気や加齢による難聴者の支援のために、町では昨年九月、手話でない筆記の通訳「要約筆記講座」を開催した。ぜひ続けられたらの思いに、講師を務めた三人の協力のもと、賛同した二十五人でボランティア団体を立ち上げた。今月十二日に設立した尾島要約筆記サークル「愛ことば」で、合併後の新市にも広めようと、太田市などでも会員を募集している。

 ここ一年を振り返ると、町が人づくりのための施策として推進してきた「ひとり一学習、一スポーツ、一ボランティア」活動では、一学習、一スポーツに属している多くの町民の方が、欠けがちだったボランティア活動を、ちょっとしたきっかけで始めてくれた。「災」が転じて「福」となって、新・太田市につないでいけたらと思う。

(上毛新聞 2005年2月28日掲載)