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◎社会参加へ絶好の機会 ワールドカップの北朝鮮との一戦、激戦であった。しかし、最後の土壇場、ロスタイムの1点が日本人を熱狂させる劇的な試合となった。もし、試合の前半に2対1の得点があって、こう着したまま試合が終わったなら、勝者、敗者の明暗をこれほど冷酷に分けることはなかっただろう。最後のありようは結果が同じでも、受け取る人の感興を全く別のものとする。 NHK会長の退任騒動があったが、辞めた人の最後のありようが潔くないと思えた。特に、ロスタイムというべき最後の会見で「これまでの経験を人材育成に生かしたい」と何らかの名誉職にとどまるような未練がましい発言を聞いたとき、「飛ぶ鳥跡を濁さず」の逆で、何とも見苦しいと感じた。当人にとっては「なぜ、プロデューサーの使い込みの責任を自分が取るのか!」という不本意な気持ちがあるのかもしれない。 しかし、登り詰めた栄誉が高ければ、受ける批判も大きいのが社会の節理と思われる。NHKにこの人と同期で入った人の中にも有能で立派な人がいたかもしれないが、時流に恵まれなければ市井の人であることに思いを致さなくてはいけないであろう。 なぜ、このように晩節を汚すことになるのか? その一因として、後の人生計画ができていないことがあるのではないだろうか。仕事が人生そのものであるとき、現在の仕事抜きの生活設計など考えられず、はたから見ると、現職にしがみついているように見える。 不名誉な退職と対極にあるのが定年であるが、この数年で団塊の世代が定年を迎えて、社会の新たな受け皿づくりが急がれる。姉の連れ合いが最近、定年となったが「家で本を読んでいるばかりで“粗大ごみ”になっている」と聞いた。私の趣味も読書であるので、家でゴロゴロしていると“粗大ごみ”になるのかと思うと他人事ではない。 定年後に何をするのか? これは早く計画を立てるのが賢明と思われる。知人たちを見ると、技術系の人で数年早く退職して起業した人、また資格を取るために専門学校に入学した女性もいる。私のお勧めは社会福祉協議会(もちろん群馬県にもある)への参加である。簡単にいえばボランティア(一部有料)である。 昨年、集落の同協会の人と独居老人や介護保険制度から漏れてしまう高齢者へのサービスを診療所の施設を利用して行う計画を立てたが、さまざまな壁に阻まれて実現できなかった。言うまでもなく「少子化、高齢社会」への対応は待ったなしの難問であるが、社会福祉協議会には住民参加による福祉を実現する可能性があると考える。この課題は社会全体で取り組むような超重量級の懸案であるが、定年者が社会参加する絶好な機会でもある。 診療所の患者さんの多くは高齢者である。折に触れて考え、教えられるのが「老い」と「死」である。仕事に恵まれても、いずれは老いがくる。名利を追っても一時の勢いのようなもので甲斐(かい)なく、さらにこれに固執するのは醜悪であると、NHK会長の退任騒動で感じた。 (上毛新聞 2005年2月25日掲載) |