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◎五感磨き自己の責任で 賞味期限とは、商品をおいしく食べられる期間を指し、それを過ぎたら、食べてはいけません、食べられません、という意味ではありません。 また、その期間とは通常、容器・外装に記載されている状態で保存されることが前提です。ですから、真夏の炎天下に車のトランクに積み放しにしておいた、というのは保存とはいいませんし、間違いなく期間は短くなります。 一般的に乾麺(めん)のうどん、そばの賞味期限は一年です。しかし、冬季に製造が適していて、夏に消費される冷や麦は一年半、そうめんはうどんより水分含有量が約1%少ないという条件で二年になっています。 これと似たような言葉に消費期限があります。製造日または加工日から五日以内で消費される生うどんとか、肉、野菜、弁当等がこれにあたります。 ところで、賞味期限が切れると、味は一気に落ちて食べられなくなる、いや有毒であるといった誤ったイメージがあるのではないでしょうか。私は、造語ですが、概念的に「賞味曲線」というものがあるような気がします。製造直後の新鮮でおいしい時期。乾物でも例外ではありません。時間の経過とともに酸化、あるいは菌が増殖し、味が徐々に劣化していく。 しかし、これは均一でなく保存状況によっても異なるものです。そして、生産者がこの辺までがおいしく食することができる許容範囲だろうというところで期限が設定されます。一方、製造直後が一番おいしいという食べ物ばかりではありません。カレー、肉の煮物等においては、封缶後、ある一定期間が経過した方のが、味が染み込んでおいしくなるという商品もあるのです。 賞味期限は商品ごとにJAS法、食品衛生法等によって一定の基準、目安がありますが、この長短は絶対ではありません。それぞれの製造者が工夫を重ね、あるいは添加物を合わせ、なおかつ、きちんとデータを取り、理論的根拠があれば他社の商品より賞味期限を長くすることも可能です。消費者は一般的に長めの商品を購入するからです。 他方で、生産者や流通業者が意図的に短く設定することもあります。商品の早い回転をめざすとか、製造者責任、販売者責任から早めに解放されたいという願望も持っているからです。 このように、製造者、販売業者は販売戦略上から賞味期限、消費期限を早めたり、遅くすることもあり得ます。 消費者サイドからいえば、製造者、流通業者の情報をうのみにするだけでなく、商品の色の変化、形状を見分ける視覚、良品と不良品を識別できるきゅう覚、味覚等、自分の五感を磨いて自己の判断と責任で食する能力も併せて必要な時代になってきた、ともいえないでしょうか。 (上毛新聞 2005年2月22日掲載) |