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NPO法人新里昆虫研究会理事長 小池 文司さん(新里村新川)

【略歴】東洋大卒。中学校教諭などを経て、すぎの子幼稚園、おおぞら保育園理事長。99年に発足し、03年にNPO法人に認証された新里昆虫研究会理事長。

自然の再生活動


◎地域の特性を生かして

 尾瀬の豊かな自然に魅了され、何度も足を運んで自然保護活動の大切さを体感している人たちも多いだろう。尾瀬の魅力は、貴重な自然を長年にわたり守ってきた多くの人々の地道な努力があったからだ。尾瀬は自然保護活動の原点ともいわれている。

 十年ほど前に、尾瀬保護財団が群馬、福島、新潟県などの行政機関や地主、保護団体などで設立された。そして、長期的で総合的な保護活動が展開されている。また、この三県では、子供たちの環境教育の一環として「尾瀬子どもサミット」を開催している。この尾瀬のように、県単位の行政の枠を超えて地主、民間団体、個人など、幅の広い多くの人々の努力と英知が集結されて、次世代へと守り継がれていくことが大事であると思う。

 世界遺産は、地球規模で普遍的な価値を持つ自然環境などを保護するのが目的で、日本では白神山地や屋久島などが自然遺産として登録されたのも同様な趣旨からである。今後は、知床などが追加されることが予想されるが、日本全土に拡大されていくことを願っている。それは、身近な自然環境を再生、保護していくことから始まるものと思う。

 新里村は、赤城山の南東山ろくの丘陵地に広がる、豊かな自然に恵まれた農山村である。かつては自然豊かな田園風景も広がっていたが、近代化の波は大きく農村の自然環境を変えてしまった。里山は荒れ、水田は土地改良事業に伴い、小川はコンクリートの水路となって、水生植物とそこにすむ水生昆虫たちは全滅の危機にさらされてしまった。

 私たち新里昆虫研究会は、貴重なホタルの保護を目的に発足し、新里の不二山に「ぐんま昆虫の森」が建設されるのを機にこの名称となった。ホタルの生息地保護は、水田などの地主の了解を得ながら水路の管理や土手の草刈りなどを実施し、同時に、除草剤や農薬などの散布も最小限に控えるようお願いしている。

 水生昆虫たちの生息条件では、水質汚染も大きな問題である。河川のクリーン大作戦やホタル観賞会などを実施し、地域の人たちにも保護活動を理解してもらっている。

 河川改修事業などは、県や村当局との関連が深い。改修に当たっては、水生植物が繁茂し、その環境で水生昆虫たちが生息できるような自然に近い工事法を採るよう提言している。生活排水などによる水質汚染は、農業集落排水事業による下水道事業も緒についたところだが、行政の総合的な自然環境保護対策の一環として、優先事業にしてほしいものだ。

 本県が推進するあぜ道とせせらぎづくりや河川・道路、里山・平地林クリーン大作戦などの奨励金事業の支援を受けながら、身近な自然の再生活動を計画的に実施している。自分たちの地域の豊かな自然を次世代に継承していくためには、官民が一体になって、地域の特性を生かした自然再生活動が大事である。

(上毛新聞 2005年2月15日掲載)