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◎何が今一番大切なのか 親は子供の誕生とともに子育てを考えるものだ。私も考えた。物が豊かな時代に生まれ育った子供たちが二十一世紀の時代を生きるとき一番欠けるものは何か、それは体力だと思った。体力が欠ければ、知力も育たない。体力と知力が充実すれば集中力が高まり、その結果、生命力があふれてくる。だから、まず思い切り遊ばせ、スポーツは必ずさせようと思った。娘たちは中三まで水泳を続けた。 そんな私は地区の少年野球チームづくりに参加し、二つのチームでコーチと監督を経験した。まず、片岡リトルタイガースで五年間コーチを務めた。聖石橋上流の河川敷に、自分たちで整地した専用球場を造ったことを思い出す。 昭和五十四年四月、乗附小学校が片岡小学校から分かれて開校した。翌年、私は校区にスポーツ少年団をつくることを提案し、PTAが三十万円の資金を出し、少年野球、女子バレー、ミニバスケットの三団体からなる乗附校区スポーツ少年団を創設した。運営は育成会が担当した。ここに少年野球チーム、乗附ライオンズが誕生した。三団体とも、現在も活動していることがうれしい。 私は七年間監督を務めたが、チームの勝敗よりも、個人の基礎体力づくりに重点を置く指導を行った。また、教育は自然に帰れとの思いから、早朝練習に徹し、早寝早起きの良い癖をつけることも心掛けた。 練習は週六日で、月曜は休み。火曜から土曜日までは朝五時半から七時まで、日曜日は大会、練習試合で一日が終わった。 昭和六十年十二月二十六日、ひろば欄に初めての私の投稿が載った。題は『師走の早朝』。「師走の少林山達磨寺、朝七時静かである。凍いてついた空気がほほをさす。二十二日早朝六時。いつものように少年野球の子供たちが、寒風の吹き抜ける暗闇の中を三三五五、校庭に集まってきた。冬場のトレーニングだ。グラウンドを五周したあと、腹筋、背筋、腕立て、スクワット等筋力トレーニングや柔軟体操を三十分ほどこなし、日曜日なので少林山までランニングに出かけた」と書いてあった。 真冬でも週六日の早朝練習は変わらず、今では信じられないことだが、寒さをしのぐため、薪を集めて校庭でたき火をした。その陰には歴代校長先生の深いご理解があった。真冬の早朝に暗闇から朝焼け、日の出に至る自然のいとなみを体感しながら、護国神社、少林山、そして碓氷の川辺を走った経験は今でも彼らの心の中に生きていると思う。このような体験は、今の子供たちにとっても必要ではないか。 子供を取り巻く環境があまりにも複雑化している今日。親がしっかりとした考えを持って、目先の成果は無視しても子供が夢中になれるものを見つけてやることが重要だと思う。 情報に振り回されて、子供にとって何が今一番大切なのかを見失っている親が増えているように私には見える。 (上毛新聞 2005年1月19日掲載) |