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常楽寺住職 本城 亮俊さん(太田市上田島町)

【略歴】群馬大教育学部第二部修了。小学校教諭、太田市教育史編さん委員。現在は同市書道連盟理事長、県書道協会理事などを務める。54年から常楽寺住職。紫雲書道会主宰。

高校の書道履修


◎危ぐされる教師不足

 第五十五回記念展として開催された県書道展(県展)も、たくさんの見学客を迎えて盛会裏に終了した。

 この県展のオープニングに出席された内山征洋県教育長が「今日の国際化時代だからこそ、日本の伝統文化をしっかりと学び、伝えていかなければならないと痛感しています。書道こそ日本の文化を代表するものの一つです」と祝辞を述べられ、日本の伝統ある書道芸術の素晴らしさを話された。

 私も県書道展の審査運営にかかわった一人として深く感動し共感もした。書を学ぶことは、単に文字を美しく書く技術を身に付けるだけでなく、書の学習を通して豊かな心を培い、先人たちが長い年月をかけてはぐくみ発展させてきた文字の伝統を受け継ぎ、悠久の歴史を学ぶことでもある。

 今日の教育にも、書写・書道はしっかりと位置付けられている。小学校では、三年生から毛筆書が取り入れられ、中学校まで国語科の中の書くことの一領域として、学習することになっている。高等学校では芸術科書道として幅広い体験と創造的活動が重視されて、生徒たちの選択履修とされている。

 全国高校総合体育祭と同じように、毎年各県持ち回りで開催されている全国高校総合文化祭で、渋川女子高校が書道部門で二年連続総合優勝を果たしている。誠に喜ばしい快挙である。この生徒たちが書道部門に参加できたのは、同校に専任の教師が在籍し、書道の指導がなされているからだ。

 私の書との出合いは高校入試で、書家であった担任教師との出会いであった。今、群馬の書道を支えている多くの書家たちも、少なからず高校時代の芸術科書道担当教師の指導を受けて育ってきている。

 私の知る近県の千葉・埼玉では、ほとんど全校に芸術科書道の専任教師が配置されている。生徒にとっても選択制をとる芸術科で、書道を選択する自由が保障されているのだ。

 しかし、群馬の高等学校の現実はどうだろうか。誠に残念なことに、書道専任の教師の採用は、昭和五十七年以降全くなく、県下に公立高校が七十四校もあるのに、書道教師九人(うち三校は国語と兼任)、書道専科の非常勤講師十人で指導に当たっている。中には一人で二校、三校と掛け持ちで指導している教師もいるとのこと。芸術科書道の授業を行っている高校は二十七校で、残る四十七校の生徒たちには、芸術科書道を選択することもできないのが本県の高校の現状であると聞く。

 私の在住する太田市の女子高校にも、かつて仮名を得意とする専任の教師が在籍し、仮名を中心とする書道部の活動が注目されていたが、今では指導教師がいないため、伝統ある書道部も廃部となってしまった。

 このような状態では、現在残っている教師たちが定年を迎えると、書道を指導する教師が一人もいなくなってしまうのでは、と危ぐしてやまない。

(上毛新聞 2005年1月10日掲載)