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安中市社会福祉協議会長 清水 辰吉さん(安中市上後閑)

【略歴】中島航空技術学校卒。県林務部(現環境・森林局)に約40年間勤務。福祉活動に尽力し現在、安中市社会福祉協議会長、同市民生委員児童委員協議会長など。

高齢者と社会


◎持てる力を役立てたい

 近年、少子高齢化社会という言葉がしきりと使われるようになった。この言葉を私なりに考えてみると、なるほど少子化問題は深刻で、国家・社会の将来にとっても最も憂慮されるところである。が、一方の高齢化については、医療や予防施策の充実、日々の健康管理、食生活の改善等により、長命の人たちが増えた。このことは誠に喜ばしいわけで、少子化と同様に心配の種とされては困るのである。

 ところが一方で、高齢化は年金・医療制度ばかりでなく、わが国の社会制度全般にわたり大きな影響を及ぼしつつあるのも事実である。また、ある面で「高齢者は生産に寄与しない扶養階層」との風潮さえ見受けられる。しかし、高齢者は、若い時代を戦渦の中で、そして戦後は貧苦に耐えながら、この国の平和と発展に寄与し今日を築き上げた、いわば功労者でもある。いつまでも敬愛され、また頼りにもされる存在でなければならない。

 とはいえ、現今のようにますます高齢化率が高まる中で、われわれ高齢者は「余生を」とか「隠居だ」などと言って、したい放題の日々を送るわけにはいかなくなってきたことも、事実と言わざるを得ない。

 安中市には、平成九年に制定された五カ条の「高齢者憲章」がある。内容を要約すると、自らの努力により健やかな心身を養い、毎日生きがいを持って、ともにいたわりあい、支えあい、住みよい環境と明るい家庭づくりを―とあり、最後の五項目は「知識と経験を活いかし持てる力を社会に役立てましょう」となっている。

 当時、この憲章の制定を求める請願を県庁退職者会の指導のもと、この団体の地区代表であった私が当局に出したものだが、この文面にあるすべてが高齢社会の基本姿勢であり、なかでも、五項の「持てる力を社会に役立てましょう」のところが気に入っている。

 高齢者は家業も、子育ても、社会奉仕でも、若者たちに負けない経験と自信を持ち合わせているのである。ゲートボールや親ぼく旅行も結構だが、進んで社会参加し、諸活動の中で心地よい汗を流したいものである。また、「趣味は長生きの友」と言われているが、お金にならなくても、何事も打ち込めば楽しみがわいてくる。

 ドイツ生まれのアメリカ人、サミエル・ウルマンは、八十歳の誕生日に「青春」と題する詩を書いた。それには「青春とは人生の期間や容姿に非(あら)ず心の持ち方にあり、人は年を重ねただけでは老いず、理想を失うとき初めて老いる。八十歳であろうとも理想を高く掲げ、希望の波を捉(とら)える限り人は青春にして已(や)む」とある。私たち高齢者も常に夢を持ち、気力を持って、長生きしてよかった…と、生きがいを感じる毎日を過ごしたいものである。

(上毛新聞 2004年12月23日掲載)