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高崎経済大学非常勤講師 桂川 孝子さん(高崎市岩押町)

【略歴】高崎市出身。89年上智大文学研究科教育学専攻博士課程前期修了。松下政経塾卒塾。住友生命総合研究所主任研究員を経て02年退職。共著「地域介護力」など。

地球環境問題


◎国家百年の計で対処を

 今年の台風被害と原油価格の高騰には共通の課題がある。

 今年は日本では台風、米国ではハリケーンが猛威を振るった。暴風雨などの異常気象は地球温暖化によって引き起こされる。温暖化は石油などの化石燃料の燃焼により排出される二酸化炭素が主な原因である。

 二酸化炭素の排出は米国24%、中国15%の順で多く、日本も5%を排出している。日本は省エネ技術が進んでいるが、自動車の大型化、家電の普及などによってエネルギー消費が拡大している。エネルギーを無意識に多量に消費する構造が生活や社会システムの中に深く入り込んでいるのだ。百年後には気温がさらに一・四―五・八度上昇し、自然災害に加えて、水不足、食料不足などが発生すると予測されている。

 一九九〇年以降、世界各地で異常気象による自然災害が多発した。ミュンヘン再保険会社によると、被害総額は九〇年代に七千百億ドルを超え、八〇年代の三倍に上った。毎年一割被害額が増加し、二〇六五年には被害額が世界総生産を上回るとの報告もある。経済活動が拡大するほどエネルギー需要が膨らみ、結果として温暖化による人的・経済的被害が拡大するという矛盾が生じているのだ。

 一方、今回の原油高は石油に依存している生活を再認識する機会となった。エネルギー自給率が4%に過ぎないわが国は、エネルギー供給の49%を石油に頼っている。ペットボトルや食品トレー、フリースなど、生活必需品の多くが石油製品である。

 服飾・雑貨、食物、車や家電、住宅や道路など、生活を支えている物質の九割は天然資源から作られている。安価な資源を使って大量に生産し、それを使い捨てることによって経済は成長し、豊かな生活が成り立っている。今回の原油高は大規模な供給途絶に起因する一過性の現象であるが、供給不安が発生すれば今後も同じことが繰り返されるだろう。二〇三〇年に石油需要は一・六倍に膨れる。世界中が石油に頼る状態は続いていくのだ。

 考えてほしい。いずれは枯渇する資源を使い捨てることによって経済成長を続ける経済・社会は健全で、持続可能だろうか。モノがあふれた便利な生活を追求するほど、自然災害に脅かされる生活は豊かといえるのだろうか。

 社会・経済を持続可能なものにするためには、その基盤を有限な天然資源のみに頼るべきではない。廃棄物などの再生資源を活用する市場メカニズムを作りだす必要がある。石油・石炭から太陽光や風力などの再生可能なエネルギーにシフトしていくことも求められている。

 これは経済・産業構造の大きな転換であり、個人の努力や企業の環境経営だけで対処できるものではない。将来起こる危機を想定した経済・社会システムの青写真を描き、明確なビジョンと戦略をもって日本の経済・産業構造を転換させていくリーダーシップが政治に求められている。今回の二つの出来事は、地球環境問題は国家百年の計として真剣に取り組むべきであるという教訓を残した。

(上毛新聞 2004年12月15日掲載)