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◎なくすのは社会の責任 日本は、平和で治安もよい、と言われている。だが、平成十四年の全国検挙件数によれば、殺された女性は百九十七人。このうち、夫に殺された女性は百二十人(約62%)。夫にけがをさせられた女性は千百九十七人(約96%)に上る。最も平和で安全なはずの家庭で、女性が暴力にさらされ、命までも奪われている。 夫・恋人からの暴力はこれまで、たかが「夫婦げんか」などと軽んじられ、放置されてきた。だが、世界中で取り組まれる中、近年、日本でも夫・恋人からの暴力をDV(ドメスティック・バイオレンス)と呼び、ようやく重大な人権問題と認識されるようになってきた。 DVの暴力には、殴る、ける、首を絞めるなどの身体的暴力、「誰のおかげで生活していけるんだ。ブタ、クズ、何もできないバカ女」などとののしる精神的暴力、セックスを強要する、避妊に協力しないなどの性的暴力などと、さまざまある。 不安と恐怖の日々の中で、被害女性はうつ病や全身打撲、骨折など、心身とも深刻なダメージを受ける。 それでも、親密な関係だから、簡単には別れられない。まして、子供がいれば、「子供を片親にしたくない」「私さえ我慢すれば、済む」「夫が暴力を振るわないようにしなければ」と、被害女性たちは、必死に暴力に耐え、家庭を守ろうとしている。 この実情を知らないと、「女性にも問題があるのでは?」と女性のせいにされかねない。 DVのきっかけは何か。「ワインを飲みたいのに、ビールを出した」「お茶がぬるい」「みそ汁の味が気に入らない」など、ささいなことが多い。仮に、女性にも問題があったとしても、暴力を正当化することはできない。肝心なのは、どんな理由があろうとも、暴力を振るってはいけない、ということなのだから。 「夫婦げんかで多少、手が出たくらいで暴力?」 DVは、夫婦げんかではない。けんかは対等な関係で起きること。だから、勝ったり、負けたりとなる。だが、DVは支配する者とされる者という、固定した力関係の中で振るわれる暴力。けんかというより、いじめに近い。 だから、DV被害女性には、「暴力は、あなたのせいではない」と、しっかり伝えたい。 DVの背景には、女性の経済的自立が難しく、男性の暴力に寛大な社会がある。 だからこそ、DV被害女性を支援して、社会の責任でDVをなくしていかなければならない。 桐生市では十月、十九歳の女性が同居の男性の暴力で死亡する事件、DV被害女性が暴力に耐えかねて、元夫を殺す事件が起きた。 一人で悩んでいないで、女性相談センター(電話027・231・4488)や、被害者支援ネット・すてっぷぐんま(電話027・231・9990)へ相談してください。 (上毛新聞 2004年12月12日掲載) |