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◎一日も早く適正な数に 「群馬のほとんどの河川で魚があまりいない」と言えば、以前の川を知る人は「そんなばかな! 五、六年前はたくさんいたぞ!」と言うでしょう。しかし、本当にいないのです。大きなニゴイとコイ、そのほかの魚がいるのは河川を管理釣り場にした所と、危険を感じたらすぐ逃げ込める場所にすむ魚だけです。県内の多くの河川ではたまに魚が見られるだけで、その増殖能力は望めません。 五年前の秋、高崎観音の見える川に行くと、鳥が上空をV字型に編隊を組み、上流に向かって二十羽ほど飛んで行きました。そのときは「ガンだ! ガンが戻って来たんだ、よかった」と内心喜んでいました。そして、その数日後の朝、和田橋下ですごい光景に出くわしました。 首の長い大きな黒い鳥が数百羽、淵尻(ふちじり)から潜っては浮き、潜っては浮きを繰り返しながら輪を作り、魚を浅い所に追い込んでいきます。輪が小さくなるにつれ、その輪を二重三重にしたとき、輪の中でピョンピョン跳ね回り、逃げまどう魚を全員で襲っていました。初めて見たとはいえ、すさまじい光景でした。編隊を組んで飛んでいたのはまさにこの鳥、カワウだったのです。 カワウは本県にすみ着いているものと、県外から飛来するものを合わせると、その数は二千羽を楽に超えるでしよう。カワウは一日平均五百グラムの魚を食べるといわれています。単純に計算すると、食べられる魚の量は一日一トンにもなります。本県の魚が毎日一トン消えるわけです。例として、上州漁業協同組合のアユの年間放流量は約七トンですから、一週間で食べ尽くされることになります。 県内の河川に漁業権を持つ漁業組合は、ここ数年で急速な経営悪化に陥っています。組合の主たる収入源である遊魚券収入が激減しているからです。組合が魚を放流してもカワウに食べられてしまう。だから魚は釣れない。釣れないから遊魚券を買わなくなる。買わないから組合の収入がまた減る。毎年、これが繰り返されてきています。 今年六月、ある漁業組合の組合長に聞いてみました。「組合長、このままカワウがいたとして、十年後は河川に関する漁業組合は幾つ残れるでしょうね」の問いに、「幾つも残らんでしょう」。カワウは遊漁者や漁業組合に悪影響を与えているだけでなく、養よう鱒そん、養よう鯉り業者、最近では管理釣り場まで大きな損害を与えています。 一日も早く適正な数まで減らしてほしいものです。そうすることにより、カワウが爆発的に増えたために姿を消してしまった水鳥たち、つまりマガモやコガモ、オナガガモ、多くのカルガモ、カイツブリ、カワセミ、オシドリなどが、きっと戻ってきてくれるでしょう。川にいろいろな生き物がたくさんいるのが理想です。今のままでは「川に強い者だけが生き残る世界」になってしまいます。 (上毛新聞 2004年12月2日掲載) |